2016年8月20日

驚愕のD級アンプ

河川が凍結した話をしていたと思ったら、いつの間にか春が過ぎ、夏が到来していた。そしてもう初秋のかほりが…。

実はつまんない理由でこのブログへアクセスするためのパソコンとしばらく離ればなれになっていたので、更新する術がが無くボーッと時間を無為に過ごしていました。

さて、久しぶりの更新に全然相応しくない話題なのだが、最近買った驚愕の物体の話である。そいつは航空便で我が家へやって来たのだが、名前も無ければ説明書も何も無く、 丸裸の物体がひとつコロンと入っていたのである。そいつの姿は…、

小さな怪しい電子部品

プチプチの中身はこの赤い基板だけだった
この500円玉より少し大きいだけの電子部品は、実はれっきとした完成品のアンプである。アンプ、つまりこれにスピーカーを繋げば音が出るというものである。昭和風に言えばステレオ装置、20世紀風に言えばミュージックコンポ、今風に言えばデジタルオーディオシステムと呼ばれている装置の中核に位置する増幅装置というものである。もっと簡単に言えば、ボリュームと呼ばれる比較的大きめのダイアルを回すとスピーカーから出る音が大きくなったり小さくなったりする装置のことである。

赤い基板の中央にある小さな銀色の正方形の金属の下に隠れて、6mm四方の小指の爪先の半分にも満たない部品が取り付けられているのであるが、そいつがこの製品の主要部品である。名前をPAM8610という。
 Key Features
■ 10W@10%THD / Channel Output into a 8 Load at 13V
■ Low Noise: -90dB
■ Over 90% Efficiency
■ 32Step DC Volume Control from -75dB to 32dB
■ With Shutdown/Mute/Fade Function
■ Over Current , Thermal and Short-Circuit Protection
■ Low THD+N
■ Low Quiescent Current
■ Pop noise suppression
■ Small Package Outlines: Thin 40-pin QFN 6mm*6mm Package
■ Pb-Free Package (RoHS Compliant)

General Description
■ The PAM8610 is a 10W (per channel) stereo class-D audio amplifier with DC Volume Control which offers low THD+N (0.1%), low EMI, and g o o d P S R R t h u s h i g h - q u a l i t y s o u n d reproduction. The 32 steps DC volume control has a +32dB to -75dB range.
■ The PAM8610 runs off of a 7V to 15V supply at much higher efficiency than competitors’ Ics.
■ The PAM8610 only requires very few external components, significantly saving cost and board space.
■ The PAM8610 is available in a 40pin QFN 6mm*6mm package.

 この小ささからは想像もつかない、すごい性能を持った部品である。8Ωの負荷で左右それぞれ10W、4Ωだと実に15Wの音声出力が可能である。普通のスピーカーを接続してボリュームを最大にすると、もれなく近所から苦情が来る程度の音量が出ると言うことだ。また、最近のデジタル部品らしくエネルギー効率が90%を越えている。つまり10W+10Wの大音量でスピーカーを鳴らすのに、乾電池や小さなACアダプタでも駆動出来るということである。

 さらに、過電流防止機能や異常高温による自動停止機能も組み込まれている。おまけに鉛を含有しない今時の環境に配慮した設計である。

これだけでもすごいけれど、こいつはアンプを作成するのに必要と思われる部品の殆どをこのパッケージの中に組み込んでおり、いわゆる外付けの部品が殆ど必要ないのである。これだけ全部入って6ミリ四方のプラスティックにギューっと詰め込んでいるのである。お陰でこの基板には数える程の抵抗とチップコンデンサ以外には、2200μFのケミコンが一つあるだけである。それ以外は全てコネクタ類である。

輸入業者のWEB画像から
見た目は怪しい電子部品だけど、一応完成品のアンプである。さっそく、電源を繋いで入力にDACをつなぎ、出力に前回作成した平面バッフルのスピーカーを繋ぐ。ただそれだけである、さすが完成品である。


何の期待もしておらず、単なる興味本位だけで買ったアンプであるが、驚いたことに音質がことのほか素晴らしかったのである。100Hz以下の低音はご愛嬌程度の音だが、中音域から高音域まで非常にクリアで伸びのある特性を持っており、 期待していなかったせいもあってびっくりするような音であった。電源投入時のPOP音も無いので、これまで使っていたアンプを外してこいつに入れ替えてしまったくらいである。

さらに驚くことに、このアンプは航空便による送料込み、税込みで480円なのである。大きさの比較のために並べた500円玉より安いという驚きの商品であった。

最近の集積技術もすごいけど、量産効果だけでは説明出来ないくらい安価で高性能の商品が、アマゾンでポチっとするだけで北海道の片隅の玄関まで届くというのは驚愕の事実である。すっげー!