2019年7月30日

豊作 (2)

世の中には分かるようでわからない名前の食材がある。そのひとつが「豆苗」であった。見た目はスプラウトの一種だと分かるんだが、スプラウトなら「ブロッコリースプラウト」「アルファルファスプラウト」「大豆もやし」などと種別が明記されている。

「豆」って一般名で特定の種類を示すものではあるまい。さらに「苗」と名乗り、成熟していないという意味以上の何物でもないという「豆苗」、さらに他のスプラウトより何だか大きくて不気味であった。そのせいで、普段からスーパーで見かけるものの、敢えて購入しようという気が起こらなかったのである。いったい何なんだ?
 
豆苗  (c)村上農園

ある日、「キューピー3分クッキング」 という3分で調理が出来る訳でも無く、放送時間も3分を大きく超えるという何が「3分」なのかさっぱり分からない番組を見ているときに、かの豆苗が取り上げられていたのである。油と相性の良いシャキシャキ野菜という位置付けの植物(食物?)だそうだ。

ちなみに「キューピー3分クッキング」は異なる二つのバージョンがあって、北海道で放送されているものと東京で放送されているものは、レシピも登場人物も全然違うのである。市販されているテキストも微妙に違う…、ってもはや別の番組なのでは?

謎番組で紹介された謎食物、これはいっちょう勇気を出して食べてやろうと決心したのであった。

恐る恐るパッケージを開けたが、特に変な匂いも無く触感も普通の植物っぽい。ベーコン、ガーリック、オリーブオイルと共に炒めてみると、大変美味しゅうございました。

普通に美味しかったことに加え、さらに驚くことには知人に教えてもらった所によると切った残りを水に浸けておくと再びもとの豆苗になるということであった。パッケージを良く見ると「料理に使用した後、残った根だけが水に浸るようにして育てれば再び新しい芽が成長して再収穫ができます!」という但し書きがパッケージに書かれていたのである。

ということで実際に水耕栽培もどきを試みると、ものの見事に再生したのである。
この後、元の大きさの8割まで育った
 さて、これのどこが「豊作」なのか?

実はこの豆苗の驚きはここからなのであった。

2度目の収穫が終わり、豆粒と切り取られた茎をただゴミ箱に放り込むのも躊躇われるので、庭の隅に穴を掘って軽く埋めておいたのである。手入れする気は全く無いし、育てる自信も無い、さらに植えたことを覚えている可能性も無いというただの放置状態の豆苗であった。

ところが、本当に忘れた頃に見てみると再びその残骸から芽が出てきて、さらにヒゲのようなものまで出てきたのである。 仕方が無いので、その辺にあった棒を地面に挿して「あとは自力で棒にしがみついて勝手に育ちなさい」と諭して再び放置しておいた。

すると、
豆?
たくさん?
結構なスピードで成長し、花が咲いたかと思ったらあっという間に結実していたのである。その後、日に日に実は成長しその数も20個を超えたのである。
ひょっとして収穫期?

 本日、恐る恐る収穫してみると
これは誰?
中身がある!
  この豆は「さやえんどう」という種類の豆で、中身は「グリンピース」である。共に、私の大嫌いな食べ物である……。 

あれ以来、豆苗が気に入って何度も購入し、その度に庭へ撒き散らした豆苗の残骸たち。今後、しばらく続くであろう豊作……、困った。