2015年6月23日

謎の巨大建造物


 普段、何気なく通行している道路だが、時々農道という標識に出会うことがある。「広域農道」「一般農道」「農免農道」などの標記である。さらに、北海道には「開拓地農道」というものもある。一般の道路と何が違うのかあまり考えたことは無いし、通行するのに特に注意が必要という訳では無い。路面もちゃんと舗装されており、道幅は一般道と同等かそれ以上であることが多い。まあ常識的に考えて、農業従事用車両の通行を目的とした道路だろうから、それらに注意して走行すれば良いと思うし、私はそのようにしている。

ちなみに、これは道路を名乗ってはいるが道路法の適応を受けない道路であり、所管も国土交通省ではなく農林水産省だそうだ。北海道には農林水産省独自の空港、道路、鉄道などがあり、調べてみると思白い。

開拓地農道

 先日、その農道を走っている時に思いもかけない場所で巨大建造物を見掛けたのであった。それは特に珍しいものでは無く道路を跨ぐただの高架橋である。ただ、それが意外な場所にあったのでちょっと驚いてしまった。


のどかな風景
その先に何かが見えて
こんな所に高架橋?

こんな所に高速道路の延伸計画やバイパス計画でもあったっけ?でも、ここは交通量が極端に少ない過疎地である。高架にしなくたって普通の交差点にしたって誰も困らない。時々、農地の真中に道路が出来てしまって、その分断された農地を行き来するのに高架橋が架けられることがあるが、それは簡易なものか規模が小さい高架橋である。それなのにこれは結構な規模だし、構造が鉄道用や高速道路用のそれになっている。一体何なんだ?

保守用設備も付いている

耐重量級の構造
ナビにも表示されないし、気になって仕方が無かったので帰宅してから調べてみた。すると驚いたことに、この高架橋を作ってまで通している道路は地図には記載されていなかったのである。さらにGoogleMapで航空写真を見てみると、この高架橋の前後には接続されている道路が無かったのである。

高架橋の両端には何も無い
 農地を繋ぐ専用道路なのかも知れないと思ったけど、この両端の農地には行き来する必然性が感じられないし、農地へ通じる道すら無いのである。ということで後日もう一度この橋を見に行くことにした。どんだけ暇なんだよと言われても仕方が無いが、気になって気になって一日中これの事ばかり考えるようになってしまうよりマシというものだ(そうなのか?)。

結局、何だかんだと言いながら行って来たのであるが、この高架橋へ通じる道を丹念に探したにもかかわらず小さな未舗装の林道のような枝道しか無かったのである。念のためにその全てに入って行ったが、行き止まりであったり全然関係の無い場所へ通じる道ばかりであった。通行する車は一台も無かったので行ったり来たり何度もしたが、ついに高架橋へ通じる道は発見出来なかったのであった。

枝道
 高架橋の近くには、JPOWERの立ち入り禁止表示があった。あの電源開発がこの高架橋を建設したのか?管理をしているだけなのか?何か隠しているんじゃないか?上流に秘密の設備を建設中なのではないか?Googleと手を組んで航空写真に細工をして見えなくしているだけでは無いのか?

高架橋の近くの看板
謎が謎を呼ぶ結果になってしまったが、とりあえず気が済んだので帰ろうかと思い車を走らせていると、前方に歩行者を発見したのである。こんな山奥の農道に人が歩いていることにとても驚いたんだが、近所に住む人だとひょっとしたらこの高架橋の正体を知っているのでは無いかと期待に胸を踊らせながら聞いてみた。聞かれた方もびっくりしたと思うが、このおばさんは快く説明してくれた。彼女によると、これは水道橋だということだった。

へ?水道橋?あんな重量級の高架橋が水道管のためだけに作られたのか…。

丘陵地間を結んでいるようだ
でもに落ちないなぁ。水道橋であればローマ時代の開放型水路じゃあるまいし、気密性の高いパイプ構造で作ることが出来るはずだ。実際、殆んどの都市ではパイプを埋設している。それならわざわざ高架橋を作らなくても、多少の高低差を吸収して地下埋設すれば済むはずである。何らかの理由で道路下へ埋設できなくても、この道路の上だけ数メートル上空にパイプを渡す長さ10m程度の簡易な橋を作れば良いだけだ。第一、そこまでして送る水の需要があるのか?人家も農地もあまり無いところだし、周囲には採石場や産業廃棄物処理場くらいしか存在していない。また、この地図より上の部分は国立公園と山岳地帯で何も無い。地図の下部には集落があるが、それは遥か遠くである。それにそこは豊かな水系の地域なので水源には事欠かない。

結局、この日はこれ以上のことは分からないまま帰宅した。

ところが、後日さらに調べて行くと意外な事実に行き当たったのであった。そうか、そんな目的で作られていたのか…。よし、今度はそっちへ行ってみよう。

つづく(のか?)。