2015年10月15日

難読地名

北海道の地名には難読なものや奇妙な当て字が用いられているものが多い。その中でも「牛」の字を使った地名が多く、読めそうで読めないものがある。

妹背牛(もせうし)、初田牛(はったうし)、美馬牛(びばうし)、養老牛(ようろううし)、伊香牛(いかうし)、別寒辺牛(べかんべうし)などは駅名になっていたり時々メディアに露出しているので読むのに苦労しないが、愛牛などは何て読むんだろうと調べてみると「あいうし」という何のヒネりも無い読み方だったりする。また、農野牛(のやうし)のように読みは問題無くても家畜の牛なのか野性の牛なのかを問い正したくなるような地名もある。

道路標識の地名表記に牛の字が含まれていると、ついついその読みを考えながら一体そんな地名の所に何があるんだろうかと考え込んでしまうのである。もちろんただの当て字なので深い意味は無いのは分かるが、やはり気になってハンドルを切ってそちらへフラフラと向かってしまうのである。

標識も千差万別であり、立派な道路標識から小型の簡素なもの、果ては板に手書きのものまで色々である。トムラウシ山で知られるトムラウシも、昔に訪れたときは「富村牛」という字が朽ち果てた柱のようなところに手書きされていて、当時は北海道の地名になじみが薄かったせいもあり、夜中にライトで照らし出されたそれはちょっぴり怖かった記憶がある。

先日、何気なく走っていると素朴な標識に出会った。


に、にんしん牛?
うむ、何て読むんだろう?なぜ赤い字なんだろう?矢印まで赤い…。


この先に難読地名の集落があるのか?
この矢印が示す先の道は、地図には出ていない。舗装はされているが、この辺りには何も無いし車も人影もまったく無いのである。このまま行っても大丈夫なんだろうか?しかし、難読地名の解読(なのか?)の誘惑には抗うことができず、興味津々でその道へ入って行った。

ほんの数分走った先に見えたのは広大な牧草地と柵、ゲートなどで仕切られた放牧地であった。そしてそのゲートには同じような標識があり、その矢印は放牧地の中を示していただけであった。

 え?地名では無かったのか…。

そう、そこは大規模放牧場であり、各地から運ばれてくる牛を預かって肥育する場所だったのである。扱いの異なる妊娠した牛とそうでない牛を分けて放牧する必要があるので、牛運搬車が迷わないように途中の道路に妊娠牛はこっちだよん、という表示板が必要だったのである。

紛らわしい標識を一般道路に設置するんじゃない!

地名解読の期待が大きかっただけに、落胆した私はこれ以上写真も撮らずにすごすごと引き返したのであった。がっかり…。