ユニットバスは試しに購入してみると分かるが、ユニットバス本体は入手出来ても「施工説明書・工事手順書」は入手出来ないのである。少なくとも正規ルートでメーカーに問い合わせても、ユニットバスを組み立てる手順や方法は素人には教えないということになっている。
ユニットバスを購入すると、パネルやドア、様々な部品がバラバラな状態でトラックに積まれてやって来る。部材には番号や記号が振られており内容物も容易に想像できるものから、ただの記号が羅列されているだけであり現物を見ても良く分からないものまである。精密機械や動力源を持った工作機械では無いので、部材を見ればある程度組立て方法は想像は出来る。しかし、想像は出来ても、何をどの手順で組み立てるべきかは分からない仕組みになっている。
メーカーは、ユニットバスに品質保証を付けているのだが、その中には「水漏れ保証」と言ったその品質が施工によって大きく左右されるものが含まれている。これが、私のような興味本位だけで組立てを敢行するといった無謀な行為から自社製品を守るために、施工に関する資料を提供しないという防御策で対応しているものと思われる。しかし、正規ルートがダメなら、そうでは無い経路から入手すれば良いだけの話である。
ということで、施工説明書から細部の寸法まで記載されたCAD図面まで入手したのであった。
私の名前と日付が入った、形式的にはオーダーメイドの図面 |
ここまで準備をしておきながら、作業が非常に面倒だからという理由で着工を後回しにしながら、ついに3年の年月が流れていったのであった。
当時は、どうせユニットバスの部材だから腐るものでも無いし、メーカー保証なんて最初からあてにしていないので関係ないやと思っていたが、どうやら3年間も寝かせておくものでは無かったようである。
説明書通りに骨組みを組み立てる |
図面を見ながらフムフム、なるほどこーやって、あーやって |
それは、組み上がったフレーム構造に壁をはめ込んでいた時に判明した、何かがおかしいのである。それぞれの寸法、位置、順序や上下など、取り付け方に何の問題も無いのに何故か壁がはめられないのである。何度やっても同じであった。何かおかしい…。
一人で持ち上げるにはギリギリの重さである2m×1.2mの壁をまた床の上に戻し、じっくり壁を点検することにしたのである。そしてその結果、驚愕の事実が判明したのである。
壁が3年の月日と自重で反ってしまったのである。
え?
微妙に反り返っている壁 |
懸命に歪みを矯正中 |
いろいろ考えて、壁を重力に対し歪んでいる逆の方向に置いて自重で元の形に戻るように試してみた。しかし、この方法だと3年はかかからないにしても、途方もない時間がかかることになる。仕方が無いので、四隅にスペーサーを入れたままの状態で、歪んでいる部分に力を加えて変形を試みたのである。
その結果、壁の中の構造物が弾性限界を越えたような異音を発し、それが可塑性の物体であることを示したのであった。
簡単に言えば、押したらミシっという音がして、壁の中が取り返しの付かない困った状況になりそうだということである。
これで、局所的に力を加えることはダメだと分かったので、今度は全体に力を加えるように作戦を変更したである。それは、一辺を床に置いたまま対辺を両手で持ち上げた状態で、連続して重力方向に運動量を変化させるのである。これにより、壁の質量分布は正規分布であるのに対し、各部の歪み率を加重平均すると応力等高線が重心を軸に等距離に分布することから、壁の重力方向の移動速度がゼロになったとき、慣性でもっとも歪みの大きい所にもっとも大きな応力がかかることになるのである。また、その変化量は歪み率と正の比例関係にあるので、各部の限界弾性までの閾値がそれぞれ近接していることからも変化量を微分しても常に正の値(たぶん定数)を取り極点は存在しないはずである。
簡単に言えば、壁の端っこを持って上下に振ったのである。こうすると、歪みの大きい所にうまい具合に大きな力がかかって壁が壊れる前に元の形に戻ってくれそうだと言うことである。ただし、壁はとても重いのでとても疲れるのである。ふー。
なんとか取り付けられた |
つづく。