2018年3月1日

冬眠芋

先日、とある農家の貯蔵庫を見せてもらう機会があり、なかなか興味深かったのである。それはジャガイモの貯蔵庫であった。

ジャガイモはサツマイモとは違い、貯蔵温度が0℃10℃(適温は2℃4℃)なので温度管理が楽である。つまり、保温構造の倉庫に、雪や氷と一緒にジャガイモを放り込んでおくだけで貯蔵が可能だからである。雪を使えば庫内の湿度は80~90%になるので、これもジャガイモの保管に具合が良い。

貯蔵庫は発砲ウレタンフォームの吹き付け工法で断熱層を形成している。厚みは100mmだそうで、これがコストと断熱性能のバランスが良いらしい。

その名の通り
雪とジャガイモ、と人々

断熱された倉庫の中に外から持ってきた雪を入れると、倉庫内はやがて0℃程度で落ち着き氷点下にはならない。そこへジャガイモを満載したコンテナを積み上げて保管しておくと、ジャガイモは寒さに耐えるために低温糖化現象を起こして体内のデンプンをショ糖に変化させ、さらにブドウ糖や果糖も生成するのである。

この時に若干ではあるが発熱するので、0℃近辺の雪温と相まって庫内は2℃~4℃と理想的な温度になるという、実にうまい仕組みである。したがって、庫内に運び入れる雪の量、保管するジャガイモの量の調節が重要なカギになるのである。

もし、ジャガイモの数が少なければどうなるのだろうか?

庫内の温度が0℃付近から上昇せず、断熱性能にもよるが庫内が部分的に氷点下になる恐れがある。


広い倉庫に極少のジャガイモ
これは別の施設であるが、なんらかの理由でジャガイモの量が確保出来なかったようで、庫内の片隅に身を寄せ合うように少量のジャガイモコンテナが積まれてあった。外はマイナス20℃の極寒である、このままでは凍害が起こる危険がある。

そこで、コイツの登場である!


強力助っ人、参上!
広い倉庫にいかにも頼り無さそうな超小型の家庭用電気ヒーターがたった1台だけ。

だ、だいじょうぶなのか?と思ったが、これでなんとかしのげるそうだ。  

この雪室による保存でジャガイモがどれだけ甘味が増すかといえば、この通り。
(c)2006 北海道農業研究センター
 サツマイモが嫌いな私は、甘いジャガイモもあまり好きでは無い。どちらかと言えばホクホクしていなくて火を通しても固さが若干残る程度のものが好きである。