9月6日、ふと夜中に目が覚めた。時計を見ると午前3時5分であった。
普段はベッドに入るとほぼ瞬時に入眠し、余程のことが無い限り目が覚めることもなく朝まで熟睡するのだが、この日は何故か目が覚めたのである。(まあ、今考えてみれば前震か何かで目覚めたのだろう…)
ものの数分ほどすると、いきなりカタカタと音がしたかと思ったらそのあとやや大きな地震を感じたのであった。通常の地震よりは大きいものの、大規模な地震では無いと直感的に思ったのであった。本棚や食器棚は全く変化なし、振動検知器(ブランコともいうが…)もほとんど揺れてなかった。
とりあえずテレビを見てみると、かなり大きな地震が発生している模様であった。と同時に、私の直感は全然あてにならないことも判明した。10分ほど放送が続き、「アナウンサー部の仮眠室で寝ておりましたところ大きな揺れを感じ……」と言いながら、ローカル放送局の見慣れたアナウンサーが見るからに寝起きの様相で画面に現れたのである。寝てたんかい?
その直後に停電が起こり、テレビをはじめ全ての照明が消えたのであった。真っ暗だな……。
とりあえず様子を見るために外へ出てみると、澄み切った空に満天の星々とともに、三日月ではあるものの明るい月が天頂で輝いていた。ライトが無くても足元が見える程度の明るさであり、なんとなくホッとしたのであった。
標高が高く見晴らしの良い我が家は庭から下界がよく見えるのだが、街の方角は真っ暗である。いつも夜景が見える帯広市内も真っ暗なのである。日高山脈の端や太平洋岸の手前の方まで人工の光の存在が無いところを見ると、少なくとも十勝地方全域で停電が発生しているようだった。気温は18℃で寒くはなかったので、人工光の無い夜空、天の川と流れ星を30分間ほど見ていた。綺麗だったな。
家の中に入って常備しているフラッシュライトを取り出し、とりあえず様子をみることにした。
どうやら携帯電話網は無事、ネットワーク接続も問題無し。このまま停電が続けば、次第に中継局のバックアップ電源も落ちて通信は途絶えるだろうが、この辺は過疎地なのでざっと12時間程度は期待出来ると思う。
水道もちゃんと綺麗な水が通常圧力で出ている。食料は10日分ほどストックがあるし、プロパンガスは20ヶ月分あるので当分困ることは無いであろう。
連続10時間程度使えるフラッシュライトも3つとも満充電状態であり、LEDランタンもOK,ロウソクも1箱ある。さらにラジオも無事、ワンセグテレビも満充電状態である。さらにさらに、巨大バッテリー付きUSB電源も、まったく偶然だけど先週満充電にしたばかりである。その他、エネループをはじめ乾電池も、とある理由でそれなりの数の備蓄があった。
これでスマホは最低10回以上は充電可能だし、テレビも最長30時間は視聴可能、夜間の照明も40時間分はあるので4〜5日は持ちそうだ。水道はこのまま給水されるのか、それとも途中で止まってしまうのか判断できないので、40リットルほど備蓄しておいた。
幸いなことに、冷凍庫は先週肉類を中心に整理したばかりなので停電が長引いても被害は少なくて済みそうである。冷蔵庫はワインとチーズがたっぷりで、腐りそうなものはあまり無い。
確認が済んで、その後しばらく寝ていたが、6時を過ぎた頃から本州の友人達からメールが届き始めたので目が覚めた。
テレビを見ると、停電は全道規模らしく長期化の可能性も否定できない様子であった。ネットニュースも流れているし、とりあえず情報収集に問題は無さそうだったので一安心であった。
さて、普段ならここで何もしないのだが、今回は思うところがあって町役場で情報収集を行ったのである。緊急時で忙しいだろうと思って電話じゃなく直接行ったのだが、職員以外にはほとんど人がおらず丁寧な対応をしてもらえた(混み合っていればそのまま帰るつもりだった)。
確認したのは、
- 役場としてどこまでこの災害を把握しているのか?
- 停電が解消するまで役場は24時間対応をするのか?
- 役場の非常電源の運用可能時間
- 停電が長引いた時の通信手段の確保(専用回線の確認)
- 長期化した場合の役場が孤立する可能性
- 水道設備の可用性(非常電源)
- 通信手段が断たれたときの住民への連絡方法
- 水道と電気が無くても使える水洗では無い公共トイレの所在
- 携帯電話網の移動基地局手配の可能性
- 避難場所の開設状況
24時間程度の停電であれば、支援が必要な人以外は生活に不便さを来すだけで済むが、停電が長期化すれば予想を超える二次災害が発生する可能性が高くなる。一番怖いのは町役場が道庁や政府からの情報が遮断され孤立することである。
結局、上記の質問にはそれぞれの部署の担当者が出てきて全て正確に答えてもらえた。なかなかしっかりした自治体のようで、ちょっと安心しました。
特に非常用の通信専用回線をちゃんと運用していることと(
まあ、専用回線とは言え、物理的な中継ノードが無事かどうかは分からないけど…)、全ての水源地(取水設備)に非常用発電機が備えられていて、この時点で全て正常稼働していることが確認済みであったことである。非常用の発電機はいざという時に起動しないとか燃料が切れているなどのトラブルが付き物だが、ここは迅速に全ての稼働を確認して状況を把握しているというのは大したものだと思う。ただ、私が恐れていたのは、送水ポンプの稼働状況よりも、消毒設備が機能しているかどうかである。だって未消毒の水が知らずに流れていたら嫌だもんね。
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動物標識の道路を通り |
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水源施設まで行った |
それでも、確認するに越したことは無いと思い、
動物標識がある山道を延々走り取水場所まで行って施設の稼働状況を確認に行く私であった。まあ確認というよりは暇つぶしだけどね。
ちゃんと入り口までタイヤの跡があったし、中からディーゼル発電機が回っている音が聞こえていたよ(外の電力計が止まったままだったので、発電機の音に間違いない)。
ニュースでホームセンターやコンビニで品不足になっていると聞いていたので、情報収集を兼ねて家から予備の電池、充電ケーブルなどを持参して町の中で人が集まる場所に行って来た。確かに電池やカセットコンロなどが売り切れていたが、特に困っている人はいなかった模様。
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懐かしいワンセグ付きガラケー(キズだらけ) |
ちなみにワンセグテレビとは、実は解約したガラケーにワンセグテレビがついていたので、非常時用のテレビとして捨てずにとっておいたものである。もちろん定期的に充電はしていたけど、まさか本当に使うとは思わなかった。このガラケーはクレドール付きでUSBケーブルを挿しっぱなしで充電しながら使え、さらにWalkman携帯と銘打っているだけあってクレドール側に高音質ステレオスピーカーが内蔵されているので、かなり明瞭な音質で聴くことが出来た。
さらにものはついでなので、このテレビの消費電力を計測してみた。平均5.12V、420mAで連続動作していた。ワンセグとは言え、消費電力が2ワット少々でカラー画面、ステレオ音声で十分使えることが判明した。もっとも古い携帯なので耐久性はとても不安だけど…。
はじめはこのテレビアプリの起動方法が分からず、一生懸命画面をスワイプしていたのは内緒。ガラケーって全てボタン操作なのね…、すっかり忘れてたよ。
結局、私の住むこの場所は7日の午前2時半頃に復旧し、トータルで23時間程度の停電で済みました。