早速作業に入るべく現場の2階で作業服に着替えていると、妻が「外で何か変な音が聞こえる」と言う。ヒグマの罠を仕掛けたり、爆音機を設置してもらったりしたせいで、妙に敏感になっているだけだろうと思い、念のためにベランダから外を覗いてみたが何も普段と変わりが無い。気のせいだよと言おうとした瞬間、120m離れた敷地の入口付近に目をやると、なんとヒグマがこちらを見ていた。
「おはようございます」
とでも言いそうな勢いでこっちを向いてヒグマが立ち上がっていたのである。
小心者の私は「く、く、くまだー」と言いながら、一瞬何が起こったのか理解できない状況が2秒程続いたのであった。
安全な2階のベランダから見下ろす熊の姿、恐さよりカメラを持っていない残念さが先に立った。カメラは1階にあるが、取りに行くのは恐い。そうこうしている内に、ヒグマはその場を去り、敷地内から森の方へ向かって足早に去って行ったのであった。
2階の窓から見たヒグマの位置 |
後で恐る恐る現場を見に行ってみたら、熊もある程度慌てていたのか少し走って逃げたような足跡が残っていた。
土にめり込む足跡 |
熊が立ち上がっていた場所から |
国有地はここから森の手前まで |
そこへ思いもかけない時間帯に私達が現れたので熊もさぞかし驚いたのであろう。建物の2階から覗く私達と目が合ってしまったので、とりあえず「あいさつ」をして慌てて去って行ったということかも知れない。
来週になると、この畑のトウモロコシは全て刈り取られる。熊も危険を犯してやって来る理由は無くなる。私達も不必要に恐れることは無くなる。そしてそのまま冬を迎えることになるだろう。
ただ、それまでは
熊は右からやって来て左の畑に入り、私達はそれと直交する道を通って建築現場に入るのである。残された数日をお互いの警戒心と行動が鬩ぎ合う日々が続くのであろう。
今度出会った時もあいさつを忘れないような関係でいたいなと、…思うか、…な?