2016年11月30日

瓦斯自動販売機

自動販売機、それは人手を介することなく利用者が目的の物を入手出来る仕組みのことである。その多くは人の出入りする場所に置かれており、利用者の需要に合わせたサービスが提供されるものである。

切符や缶コーヒーなどの当たり前の商品が提供されることもあれば、需給バランスが保たれてさえいれば、何でそんなものが?というものまで売られていることもある。それは「おでん」や「うどん」の販売機であったり「卵」の販売機であったりする。中国の北京の地下鉄のコンコースには生きた上海蟹の販売機まであったようだが、動物虐待の疑いがあって撤去されたらしい。日本にも生きたザリガニをカプセルに入れてUFOキャッチャーにいれるという後先を考えない行動に出たものもあったようだが、今となってはどうなったか…。

先日、某地方自治体からのお誘いで、とある資料館へ行く機会があった。そこは年に1日しか開館しないという民族資料館であり、地元でもほとんど誰もその存在を知らないというレアな場所であった。

そこは北海道の生活資料館らしく、開拓当時の貴重な資料も多く大変興味深いものが多かった。そんな中でひときわ珍しいものがあったのである。

それは、ガスの自動販売機であった。

ガスの自動販売機

「ガス」は「瓦斯」という漢字表記
10円で8分間らしい

このレバーを

時計回りのクルッと回せばガスが出てくらしい
その説明は確かにその通りであろうと思われるし、実際にその通りに動作したのである。(ちなみにこの資料館は、展示物に手を触れて実際の動きを観察する事を推奨している)

しかし、 10円で8分間ガスが出るということは分かったが、そのガスをどのように利用するのかが分からなかったのである。この機械から出ているホースは低圧用のものなので、充填目的の高圧ホースのようにこれを使ってボンベにガスを入れることは不可能である。

10円を入れて出てきたガスをどうやって使うのか?何故8分間なのか?そもそも、こいつはどこで活躍していたものなのか?疑問だらけであった。

 同行の人達に聞いてみたところ、おそらく昔の宿や湯治場などに置かれていたガス設備(コンロなど)を有料で利用できるようにしたものでは無いかということであった。後日ネットで調べてみると、確かにそのような場所で使用されていたようである。ちょうど、昭和の時代に旅館のテレビや展望台の望遠鏡が100円を入れないと利用出来ないのと同じようなものらしかった。確かにお金を入れて指定の時間が経過すればその動作を停止するというのも同じである。

その利用形態といい、「瓦斯」という表記からも、これはおそらくこの機械は昭和の前半に使用されていたのだなと勝手に納得していたが、ふと側面を見てみると、そこには製造年月日が書かれており、それは「 平成6年9月」であった。え?そんな最近まで需要があるものだったんだ…。

大阪に本社のある会社らしい
他所で見つけた「使用方法説明」

その他にも分かるようで分からないものも展示されていた。

学校給食用のミルクピッチャー
ピッチャーではなく「やかん」らしい
これも昭和の前半のものかと思っていたら、同行者の40代の人々が「ああ、なつかしい。学校の給食でお世話になったね!」と言っていたので、それほど古いものでは無いらしい。私は給食の牛乳と言えば、瓶入りか紙パックしか知らない。北海道特有の器具なんだろうか?

2016年11月28日

ちゆごく

今年は鉄道を使う機会が多く、各地を巡って旅情に浸っていた。特に気候の良い時期にJRで過疎地を訪れると、人の姿はまばらというより全く見ることも無いような地域もある。都会の喧騒に辟易している私にはこのような情景が好きなのだが、ただひとつ困ることがある。それは食事である。

行き先を決めて計画を立てていれば事前に食料を購入するだの、近隣のレストラン情報を仕入れておくだのするのだろうが、全く行き当たりばったりで移動しているとそういう訳にも行かないのである。そんな時は列車の待ち時間を利用して途中下車するのだが、無人駅で周辺に人の姿の見えないような所だとコンビニすら無いこともある。少ないながらも人家が見受けられるので生活している人がおり、その人々の生活を支える商店などがあると思いながら探してみるのだが、それすら全く見当たらない土地もある。まあ駅が無人であることが全てを物語っているんだろうけど。

そのような集落でも場所によってはJA系の小売店が存在することがある。スーパーマーケットと呼べる規模では無いけれど、個人商店程度の大きさであっても菓子類、飲料、お弁当などが売られている。この日訪れた集落にもJA系の店があるだけで、他に選択肢がある訳でも無いので、数種類しか無い中からじっくり弁当を選びお茶を片手に駅へ戻ったのであった。

気温は20℃程度で快晴無風。無人駅のホームには他の乗客の姿は無く、鳥の囀りだけが聞こえてくる長閑な昼下がり、私は厳選うなぎ弁当を食べるのであった。

食べる前に写真を撮り忘れた
特に美味しくも無く不味くも無く、記憶に残らないような味であったが、無人のホームから見える景色は最高であったので、とても満足できる食事ではあった。

なんだかんだと言いながらも食べ終わって満足した私はゴミを片付けようとしてふと弁当の包装に目をやると、何だか違和感を覚える表記が目に入って来たのである。

原材料名が…

うなぎ(ちゆごくさん)。へ?ちゆごくさん?

書かれている原材料名の産地表記なんだろうが、ちゆごくさんってどういう意図で書かれたのであろうか?漢字が印刷出来ない訳でも無いし、拗音(小さい「ゆ」)が印字出来ない訳でも無い。同じラベルの中で「調味料」は漢字だし、「しょうゆ」「せいしゅ」は拗音もちゃんと表記されているからである。じゃあ、何故「中国産」や「ちゅうごくさん」では無く、「ちゆごくさん」なんだろうか?

さらに良く見ると、読点の位置も変である。「調味料うなぎ」、「ちゆごくさんしょうゆ」なのか?

そんなどうでも良い事を一生懸命考えている内に時間がどんどん過ぎて行き、ほどなく列車がホームに入って来た。今回は列車の乗り継ぎ時間が長く、どうやって暇つぶしをしようか悩んでいたんだけれど、ちゆごくさんのお陰で退屈することは無かった。

は!これはひょっとして無人駅で時間を持て余している旅人への、地元愛にあふれる新手のサービスだったのか?