2018年2月27日

エネルギー循環施設(1)

先日、とあるエネルギー循環施設を見学する機会があり、なかなか興味深いものを見せてもらえたのである。

続けざまに「先日、とある…」から始まっているブログだが、いったい「先日」に何が起こったのだ?と思うだろうが、偶然色々な施設を見る機会がまとめてやって来ただけである。いや、それはそれでとても面白かったよ。

さてこの施設だが、 酪農王国の地らしく家畜の糞尿処理と再生エネルギー活用という、ごくありふれたものであった。しかし、その副次エネルギーの活用方法が面白く、また私の今後の計画に大きく役立つものであったのでとても嬉しかったのである。



糞尿槽

研究棟
糞尿処理施設へは近隣農家から専用のダンプカーや糞尿運搬車などで運び入れられる。その糞尿は好気性バクテリアが活動するタンクで数日撹拌され、その後嫌気性バクテリアが活躍する密閉タンクへ送られる。ここでは38℃程度の恒温槽(って言うのかな?)で20日前後撹拌されるのである。

牛のお尻からお別れしたウンコは、ここで1ヶ月近くもグルグルぐるぐる回りっ放しである。もうドロドロのぐっちゃぐっちゃである。さらに発酵しているものだからガスもブクぶくブクぶくと出っ放しである。ぐるぐるぐちゃぐちゃぶくぶく。

今後、乳製品や牛肉料理を食べるときは、このシーンが頭に浮かんでしまうんだろうな…😱。

さて、ここで絞り出されたガスはメタンガスが主であり、これを脱硫(硫黄成分を除去すること)したのち、ガスタービンもしくはガスエンジンに送られ、今度はウンコじゃ無く発電機を回すのである。

この時、大量の廃熱がエンジンと発電機から放出されるが、これを熱交換器を通して隣接する農業施設へ送るのである。


温室と農作物
ここは温室なので晴れている日中はそれだけで十分暖かいのだが、夜間などは先程の回収した廃熱を用いて温室内の温度を一定に保つのである。その温度とは、

なんと37℃であった。

ここまではどこの処理施設にもあるようなありふれた光景なのだが、この施設のすごい所は、冬の暖房だけでなく夏の冷房にも同じ熱交換器を使っているのである。つまり、冬は温室内を真夏の温度に保ち、夏は真冬の温度に保つのである。

その結果、北半球と真逆の気候が人工的に作り出せるということである。それも廃熱という通常ならその名のとおり廃棄される熱を使ってである。ちなみに冷房は、この寒冷地の特徴を生かして冬の間に貯蔵した雪と氷を用いるのである。冷房、暖房その両方を廃用エネルギーを使って農作物を栽培している。

なぜ夏冬を逆転させているかと言えば、それは「オフシーズンに最盛期を迎える作物は高値で売れるから」である。

では、ここでは何を作っているのかというと、それはマンゴーである。そしてその売値は高いものでひとつ3万円だそうである。すっげー!

ちなみに、冷静な目でここの発熱量、熱交換器の効率(型番からメーカー公表値が得られる)、温室の熱損失などを計算してみると、エネルギー収支は微妙にマイナスな結果になる。私の計算が間違っているのかも知れないけど、大きくは外れていないと思う。

さて、この施設を見学して得られたものは、これも私の今後に大いに役立つものであったが、言うまでも無く、私は農業には全く興味が無いので、これと同じようなものを作ろうとしている訳では無い。うむ。