2018年3月4日

エネルギー循環施設(3)

先日、とある…(以下、略)

再び牛の排泄物エネルギーの話だが、今度は別の施設である。

こちらは前回と比較してやや小規模のプラントである。ただ、この施設の見学は設計施行担当者、運用責任者などが揃っており、色々な質問に答えて頂いたので大変有意義であった。

搬入口

10tダンプが小さく見える
 10トンダンプカーでやって来た牛の糞尿は、ここで荷台から下ろされる。この搬入口の床には大きな穴ががあいており、地下すぐのところに巨大撹拌槽があり中でグルグル回されている。外気と触れるところであり、主に好気性バクテリアを用いて最初の発酵が始まるのである。

発酵槽の室内側
 最初ので好気性発酵が終わったのち、ここの嫌気性発酵へポンプで圧送して(中身を考えるとすごいな…)恒温発酵が始まるのである。この手の施設で外から見える巨大な円形タンクがこれである。

この嫌気性発酵槽は約38℃に保たれており、牛の体温に近い環境で発酵が進む。中では撹拌装置が頑張ってウンコをグルグル回しているのである、20日間も…。


撹拌中のブツ
撮影技術が未熟な私が撮影したのでピンボケ写真だが、この場合は腕が悪くて良かったというべきか…(うむ)。



発電設備全景
発電機
熱交換器
ガスコントローラー
発酵槽で生成されたメタンガスが脱硫装置を経てこのガスエンジンへ送り込まれる。ここでガスを燃焼(内燃)させてそのエネルギーで発電機を回して電気を作り、排出された熱を熱交換器で各所に送られるようになっている。


熱交換器から送られてきた熱は、発酵槽へ戻して槽の保温に使われている。ひとつは発酵の促進だが、ここのように寒冷地だと凍結防止の保温も兼ねている。ウンコが自らのエネルギーで自分自身を温めているのか…、侮れないウンコ。

 この発電機には「故障の際はここへ電話してね +49-2568-9347」と書かれていた。49ってドイツだな、そっかこれはドイツ製なんだ。メーカーの資料によると、出力は150KW(最大160KW)の電力とエネルギー換算で155KWの熱である。変換効率はそれぞれ41.5%と40.2%である。ウンコの持つエネルギーの80%以上が利用可能ということである。さすが最新式のコジェネレーションだ。

発電された電力は、このプラント自身で消費する分を除いて売電されており、ランニングコストの大きな部分を支えているのであろう。さらに、槽でメタンガスを搾り取られた残りは、液肥という畑に撒くための肥料となり各農家へ運搬されるのだそうだ。 

これまで堆肥化させて畑に撒いていた糞尿だが、この施設のようなバイオガスプラントに集約することにより、畑への散布時の匂い低減、分解し切れない量の堆肥が地中へ浸透することによる地下水汚染の防止、冬季の糞尿凍結対策など、農家自身や環境に非常に大きなメリットがある。

これまで何となく見ていたバイオガスプラントだが、考えていた以上に高い技術で高度な処理が行われており、大変勉強になりました。

2018年3月2日

不思議な温室

先日、とある農家の…(以下、省略)

この施設は、個人で維持管理されている温室、いわゆるビニールハウスである。ここの持ち主からこの温室の話を聞いて以来、チャンスがあれば是非拝見したいと心待ちにしていたのである。それがとうとう現実のものとなり、ご厚意で見せて頂く機会に恵まれたのである。もうテンション上がりまくりであった。

外観はごく普通の温室
 個人宅の片隅にそれはあった。特に変わった構造でも無く、普通の大きさ・形のビニールハウスである。

中も普通の畑に見える
 中はごく普通の畑(良く知らないけど)のようで、特に変わった所は無い。

屋根もビニール一枚だけ
 寒冷地にあるようなビニールが二重になっていたり、断熱層を持っていたりする訳でも無く、これも普通の温室に見えるのである。入り口もブルーシート外側を覆っているだけで普通のビニールドアであった。

ところがである、この温室はこの真冬の2月にもネギ、キャベツ、小松菜など葉物野菜がたっぷり成長中なのである。いくら晴天率が高いとは言っても、夜の気温はマイナス20℃程度まで下がる土地柄である。どうやって野菜類を夜間の凍れから守っているのだろうか?

初めてこの話を聞いた時、にわかには信じられなかった。普通のビニールハウスで野菜類を通年栽培しているのである、それも石油や電力、もちろん温泉熱も使わずにである。 私が想像していたのは、何重にも断熱層を重ねた大掛かりな設備で、巨大な蓄熱体を擁するものであった。しかし、現物を見てみると想像とは全く異なる、ごく普通のビニールハウスだったのである。それも、かなり年季が入って所々補修痕があるものだったのである。

詳しく聞いてみたところ、このハウスは30年前に建てたもので一度も建て直していないそうである。実際、支柱などはサビだけでなく、苔まで生していたのである。ビニールくらいは何度か張り替えたのか聞いてみても、所々補修用のビニールを充てがっているだけで30年間使い続けているそうだ。触れさせてもらったけれど、特に厚いものでも無くどちらかと言えば頼りないビニールシートであった。

結局、色々見せてもらいながら詳細に話を聞いていると、このハウスは科学的な根拠に基づき設計されており、また地表温度だけに止まらず、地中の温度分布やpHなどの計測なども怠りなく行われており、その数値がびっしりと書かれた記録ノートも見せてもらった。そして、それら養分・熱量・水分そして土壌が極めて微妙なバランスの上に成り立っている、他に類を見ないハウスであることが分かり、感心を通り越して感動してしまいました。すごいの一言だ…。

この日は朝の10時だったが、畑の表面温度は24℃であった。

表皮は痛んで見えるが、中は綺麗な緑色のキャベツ
土壌改質に余念が無い
 農業に全く興味の無い私は、この作物の出来具合などは分からなかったが、自家消費以外にも一部は出荷しているらしいので、十分な品質を保っているのだろう。彼はこの30年、年間を通して葉物野菜を買ったことが無いそうだ。つまり気候の影響をあまり受けず安定した品質と収量があると言うことだろう。

 さて、私の最大の関心事であるこのハウスのエネルギー循環だが、要約すると以下の通りである。

熱・光エネルギーは専ら太陽光であり、この地の晴天率をはじめとする変動の少ない日照時間があって初めて成り立つエネルギー収支である。昼間の受光量と夜間の熱損失は、地表の比較的浅い礫層に蓄熱層が形成されており、昼間の熱が夜間に抜け切らないようである。また、水分コントロールが絶妙で、地表部分はほぼ乾燥状態にすることによって凍害を回避出来ている。また、火山灰層を養土下に分布させることによって礫への熱伝導を阻害せず、かつ植物の根の到達範囲に充分な水分を供給出来ている。さらに夜間の保温層としても機能するという、素晴らしいアイデアである。


 この地方には土室(つちむろ)という、これと同じような原理の半地下倉庫のようなガラス張りの室があるが、それより手間がかからず熱効率や熱利用状況も優れているようであった。

その後、土壌改良に関する話が続いたが、農業知識全般が見事に欠落している私にはさっぱり分からなかった、残念…。

2018年3月1日

冬眠芋

先日、とある農家の貯蔵庫を見せてもらう機会があり、なかなか興味深かったのである。それはジャガイモの貯蔵庫であった。

ジャガイモはサツマイモとは違い、貯蔵温度が0℃10℃(適温は2℃4℃)なので温度管理が楽である。つまり、保温構造の倉庫に、雪や氷と一緒にジャガイモを放り込んでおくだけで貯蔵が可能だからである。雪を使えば庫内の湿度は80~90%になるので、これもジャガイモの保管に具合が良い。

貯蔵庫は発砲ウレタンフォームの吹き付け工法で断熱層を形成している。厚みは100mmだそうで、これがコストと断熱性能のバランスが良いらしい。

その名の通り
雪とジャガイモ、と人々

断熱された倉庫の中に外から持ってきた雪を入れると、倉庫内はやがて0℃程度で落ち着き氷点下にはならない。そこへジャガイモを満載したコンテナを積み上げて保管しておくと、ジャガイモは寒さに耐えるために低温糖化現象を起こして体内のデンプンをショ糖に変化させ、さらにブドウ糖や果糖も生成するのである。

この時に若干ではあるが発熱するので、0℃近辺の雪温と相まって庫内は2℃~4℃と理想的な温度になるという、実にうまい仕組みである。したがって、庫内に運び入れる雪の量、保管するジャガイモの量の調節が重要なカギになるのである。

もし、ジャガイモの数が少なければどうなるのだろうか?

庫内の温度が0℃付近から上昇せず、断熱性能にもよるが庫内が部分的に氷点下になる恐れがある。


広い倉庫に極少のジャガイモ
これは別の施設であるが、なんらかの理由でジャガイモの量が確保出来なかったようで、庫内の片隅に身を寄せ合うように少量のジャガイモコンテナが積まれてあった。外はマイナス20℃の極寒である、このままでは凍害が起こる危険がある。

そこで、コイツの登場である!


強力助っ人、参上!
広い倉庫にいかにも頼り無さそうな超小型の家庭用電気ヒーターがたった1台だけ。

だ、だいじょうぶなのか?と思ったが、これでなんとかしのげるそうだ。  

この雪室による保存でジャガイモがどれだけ甘味が増すかといえば、この通り。
(c)2006 北海道農業研究センター
 サツマイモが嫌いな私は、甘いジャガイモもあまり好きでは無い。どちらかと言えばホクホクしていなくて火を通しても固さが若干残る程度のものが好きである。