この一ヵ月の間に色々なことがあり、リフォームを一時中断。その代わり、今後の作業のために各種実験中。
計画では、家の最終仕上げである外壁および内壁は土壁にしようと考えている。日本の伝統技法の砂壁や漆喰、竹小舞を用いた土壁では無く、フレスコ画が書かれている壁の下地のような感じである。この手法で築かれた壁は、まるで鍾乳洞の壁面の雰囲気がある(はず)。家にそんなものを求める事の是非はとりあえず不問として先へ進む。
その方法とは、Ca(OH)2を主成分にした壁材を塗って、CaCO3に変化させて強度を保つ作戦である。
言い替えれば、消石灰を壁に塗り、時間が経過すれば空気中の二酸化炭素で硬化し頑丈な壁となるということ。
伝統的な漆喰も同じ原理なんだけど、作り方を見ているととてもじゃないけどマネできない。スサだとか海藻糊だとか面倒なものばかり必要で、おまけに寝かせる時間などの一筋縄では行かない要素が多分にある。
そこで、長年溜め込んだ不必要な知識の宝庫から関係のありそうなネタを拾い出し、新しい方法を試みることにした。
漆喰の主原料は消石灰、農家が畑に撒くのも消石灰、しかしその値段には大きな開きがある。どうせ中身は同じようなものだし、60%以上の純度であれば問題無いので迷わず農業用を購入。
このまま塗っても硬化し難いので色々工夫をこらすことにした。まずは歴史に学ぶことから始める。原理的に私のしたいことに近く、頑丈で、実績があり、特殊な工法では無く、その量(数、箇所)が多い。これらを全て満たすものは万里の長城である。
と言うことで、アメリカの化学学会(Division of the American Chemical Society)から関連のありそうな論文
(http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ar9001944)を拝借した。
これらを全てまとめて実行したのが下記である。
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川底の土の山(奥)とふるい分けられた残骸(手前) |
先日入手した44トンの土から細かい砂と粘土をその他からふるい分ける。
道具はこれだけである。そう、コメリで買った980円のフルイ。これにスコップ一杯づつの土砂をすくってふるい分けると言う原始的な方法で行う。まるで罰ゲームのような苛酷な試練であるが、いざやってみると意外に面白い。一心不乱で1時間、一輪車にいっぱいの粘土質を含む砂ができあがった。
これに消石灰と論文からパクッて来た秘密の材料、川の粘土&砂を混ぜる。消石灰は先に述べたように農業用。純度は70%ということであるが、残りの30%の正体が不明なので大丈夫だろうかという一抹の不安があったが、この袋に書かれているおっさんの顔を見ると、細かいことは考えても仕方が無いと納得させられた。
秘密の材料は、近所のスーパーで特売で298円の上新粉である。そう、米の粉。これが何の役に立つかというと、こいつはアミロペクチンという物質を含んでおり、これが壁の補強材として働くのである。だが、この論文を書いた博士も、スーパーの特売の上新粉だと結論付けられてさぞかし残念な思いで一杯であろう。彼には内緒にしておこう。
これらを、トロ船と呼ばれるプラスティックの箱の中へ入れて混ぜるのである。
消石灰、上新粉を混ぜる。博士の論文によると、混合比率は1%が最も効率的であるということなのでそうする。左に見えるのは、解体作業で出た天井の切れ端と198円で買った鏝。
これらを、トロ船と呼ばれるプラスティックの箱の中へ入れて混ぜるのである。色々なことを人力でこなしている私であるが、撹拌作業だけは絶対にしたくないので、
撹拌機を買った。
砂と粘土、消石灰との混合比率は秘密である。本人が覚えていないからである。
で、OSB板に
トリカルネットを張って、その上に塗る作業を行った。
夕日に照らされて、美しい色に仕上った。結局、2m×3mと2m×2.7mの壁を4面塗ることが出来た。
消石灰20Kg(600円)、上新粉255g(298円)、粘土&砂(無料)、トリカルネット910mm×24m(2600円)で完成した。
仕上げはまた後日。