2018年3月11日

大荒れの天気

一昨日は大荒れの天気となり、各地で被害が出ていたようだ。

こんな日に限って出掛けなきゃいけない用事があった私は、朝早くから交通手段を模索する必要に迫られていたのである。というのも、JRの特急が全て始発から終日運休となっており、代替手段である高速バスも始発から運休状態であったからである。

先週降り積もった大量の雪が、前日からの大雨と気温の異常な上昇によって融雪が急速に進み、各所で河川の増水、道路の冠水などが起き、さらに雪崩の危険が非常に高かったため高速道路は言うに及ばず一般道路も完全に通行止めとなっていた。JRも山越え箇所では雪崩の危険があるため運行する気配はまったく無かったのである。

道東を中心に通行止めだらけ
この日にどうしても札幌方面に行かなければならなかった私は、北へ向かって旭川経由、南へ向かって襟裳岬経由、その手前の野塚峠経由で日高山脈越えなど色々考えていたのであるが、十勝平野から東西南北全ての方角の全ての道路が通行止めオンパレードとなっており、何処へも抜けられないという閉じ込められた状態であった。

さて困った。

テレビのニュース、データ放送、ネット、バス会社への電話など情報収集を行ったが、結果は「どこも通れないので仕方が無い」ということであった。 

こんな状況でも飛行機だけは飛んでいた。どこの空港も天候による欠航は無かったようである。これに加えて、札幌から新千歳空港までは、JRも道路も通じていたので、この混乱は一部の地域だけの問題となり、道内のそれほど大きなニュースにはなっていなかったのである。

 結局どうしようもなかった私は、各所に連絡して予定を全てキャンセルせざるを得なかったのであった。まったくもって一日がまる潰れであった。

 閑話休題

ここは洪水の恐れも無く、除雪もしっかり行われていたので、その後の心配はまったく無いはずであった。ところが、気温がプラス9℃まで上がり、暖かい風雨によって道路の雪が全部無くなると思っていたのだが、私の予想に反して雪は柔らかくなったもののシャーベット状になった時点で夜を迎えたのである。

そしてそのまま氷点下になり、翌朝には我が家の敷地の道路は完全に凍ってしまったのである。所々凍ってるとか、道の端は通れるとかいうレベルでは無く、氷の滑り台状態だったのである。歩くこともままならず、ましてやスタッドレスといえども所詮ゴムタイヤではどうしようも無いような路面であった。

この道は入り口から玄関に向かって50mほどの緩い上り坂である。路面は見事にツルツルである。頑張って歩こうとしたのだが、とてもじゃないけど歩けなかったのである。



試しに小さな氷の塊を道に置いただけで、カラカラと音を立てながら緩やかに20mほど滑って行った。本当にツルッツルのようだ。

今日も出掛けられないのか?いや、車は滑っても何とか出られるかも知れないと思い、意を決して出掛けたのである。車は下り坂に差し掛かると、ハンドルもブレーキもまったく効かない状態で、でもまっすぐに滑り台の端までたどり着いたのである。

なんだ、大したこと無かったじゃないか、ははは。

と機嫌良く出掛けたのであるが、帰りはどうやってこの坂を登れば良いのだろうと、下り切ってから気がついたのであった。下りられたなら登れるのでは無いか?いや、登れない崖だって飛び降りるのは簡単だ、飛行機から飛び降りるのも簡単だけど元に戻るのは不可能である。

用事を済ませてとりあえず帰って来た私は、再び意を決してこの坂に挑戦したのである。その結果、半分諦めていたのだが、予想を覆すかのようにこのスタッドレスタイヤは悲鳴を上げながらも何とかこの坂を登ってくれた。

いやーすごいな、スタッドレスタイヤ…。

2018年3月8日

餌争奪

我が家の給餌台には様々な鳥がやって来る。

多くはシジュウカラ、ゴジュウカラ、コガラなどの小鳥が主だが、時々ミヤマカケス、ヒヨドリなどの中型鳥も来る。隣接している畑には白鳥が大群でやって来ることもある、うるさいけど…。

餌は小鳥にはヒマワリの種だが、黒い種で小粒のものを選んで与えている。こちらの方が重量当たりのカロリーが多く、小粒なので食べ易いようである。

コガラ
 毎冬、くの種の鳥がやって来るが、意外なことに雀が来たことが無かったのである。過去にニュウナイスズメが工事中の我が家に入り込んで脱出出来ずに餓死しかけていたことはある。その他にもスズメサイズの小鳥は来るのだが、一番ポピュラーだと思われるコイツが来ないのは何故なんだろう?と思っていた。

ある日、ふと給餌台に目をやると、そこには傍若無人な態度の雀が餌の中程に鎮座して、ひたすら餌を頬張っていた。コガラやシジュウカラは、ヒマワリの種を足で押さえながら器用に殻を剥いて食べるが、スズメはクチバシと舌だけで殻を剥いて食べていた。コイツの方が器用なのかも知れないな…。

我が物顔のスズメ
 コガラは7~8羽でやって来て、仲間内の力関係なのか順番に餌を啄んでいる。順位の低そうなコガラが餌台に到着しても、上位のコガラがやって来ると餌も咥えずに近くの枝に退避する。なかなか上下関係が厳しそうだ。

コガラの群れにシジュウカラが来ると、今度は種(しゅ)の上下関係なのかどうか知らないけれど、コガラ達はその順位に関係なくシジュウカラに場所を明け渡している。まあ、身体も若干大きいからなのかな?

それでも、彼らは野鳥なので警戒心から給餌台に長く滞在すること無く、比較的短時間で餌を咥えて近くの木々へ移って、そちらでゆっくり啄むという行動様式である。 ヒマワリを2粒ほど咥えて飛んで行き、また戻って来るのである。給餌台へ飛来する往復のエネルギーと2粒の餌に含まれるカロリーとどちらが多いのだろう?

さてスズメであるが、こいつはこの給餌台の微妙な力関係を一切無視して我が物顔で餌を食べるのである。他の鳥がいてもお構い無しに餌台を独占するのである。そして、数分間という長い時間滞在して腹一杯餌を食べるのである。可愛気の無い鳥である。


図体のデカいミヤマカケスやヒヨドリも給餌台を独占するような食べ方はするものの、スズメのように長時間滞在することはあまり無く、さっさとどこかへ飛んでいく。やはり、スズメが最も無遠慮な奴なのか?

ところがである、このスズメの上を行く奴がいたのである。

先日ロプノールが何かをしきりに追いかけていたので様子を見ていると、なんとエゾライチョウの小さい奴がロプノールの小屋の前で追いかけ回されていたのである。

鳥なんだからさっさと飛んで逃げれば良いのに、鎖につながれた犬に追いかけ回されているのである。何故だろう?と思ってしばらく様子をうかがっていると、ほんの数十秒間の出来事ではあったが、このエゾライチョウはロプノールの餌入れからドッグフードを盗み食いしていたのであった。

結局、追いかけられながらも2度ロプノールの餌入れから餌を盗んで飛び去って行った。ドッグフードってそんな危険を犯してまで食べたくなるほど美味しいのか?

 あまりの出来事に写真を撮る間も無かったのが悔やまれる…。

2018年3月4日

エネルギー循環施設(3)

先日、とある…(以下、略)

再び牛の排泄物エネルギーの話だが、今度は別の施設である。

こちらは前回と比較してやや小規模のプラントである。ただ、この施設の見学は設計施行担当者、運用責任者などが揃っており、色々な質問に答えて頂いたので大変有意義であった。

搬入口

10tダンプが小さく見える
 10トンダンプカーでやって来た牛の糞尿は、ここで荷台から下ろされる。この搬入口の床には大きな穴ががあいており、地下すぐのところに巨大撹拌槽があり中でグルグル回されている。外気と触れるところであり、主に好気性バクテリアを用いて最初の発酵が始まるのである。

発酵槽の室内側
 最初ので好気性発酵が終わったのち、ここの嫌気性発酵へポンプで圧送して(中身を考えるとすごいな…)恒温発酵が始まるのである。この手の施設で外から見える巨大な円形タンクがこれである。

この嫌気性発酵槽は約38℃に保たれており、牛の体温に近い環境で発酵が進む。中では撹拌装置が頑張ってウンコをグルグル回しているのである、20日間も…。


撹拌中のブツ
撮影技術が未熟な私が撮影したのでピンボケ写真だが、この場合は腕が悪くて良かったというべきか…(うむ)。



発電設備全景
発電機
熱交換器
ガスコントローラー
発酵槽で生成されたメタンガスが脱硫装置を経てこのガスエンジンへ送り込まれる。ここでガスを燃焼(内燃)させてそのエネルギーで発電機を回して電気を作り、排出された熱を熱交換器で各所に送られるようになっている。


熱交換器から送られてきた熱は、発酵槽へ戻して槽の保温に使われている。ひとつは発酵の促進だが、ここのように寒冷地だと凍結防止の保温も兼ねている。ウンコが自らのエネルギーで自分自身を温めているのか…、侮れないウンコ。

 この発電機には「故障の際はここへ電話してね +49-2568-9347」と書かれていた。49ってドイツだな、そっかこれはドイツ製なんだ。メーカーの資料によると、出力は150KW(最大160KW)の電力とエネルギー換算で155KWの熱である。変換効率はそれぞれ41.5%と40.2%である。ウンコの持つエネルギーの80%以上が利用可能ということである。さすが最新式のコジェネレーションだ。

発電された電力は、このプラント自身で消費する分を除いて売電されており、ランニングコストの大きな部分を支えているのであろう。さらに、槽でメタンガスを搾り取られた残りは、液肥という畑に撒くための肥料となり各農家へ運搬されるのだそうだ。 

これまで堆肥化させて畑に撒いていた糞尿だが、この施設のようなバイオガスプラントに集約することにより、畑への散布時の匂い低減、分解し切れない量の堆肥が地中へ浸透することによる地下水汚染の防止、冬季の糞尿凍結対策など、農家自身や環境に非常に大きなメリットがある。

これまで何となく見ていたバイオガスプラントだが、考えていた以上に高い技術で高度な処理が行われており、大変勉強になりました。

2018年3月2日

不思議な温室

先日、とある農家の…(以下、省略)

この施設は、個人で維持管理されている温室、いわゆるビニールハウスである。ここの持ち主からこの温室の話を聞いて以来、チャンスがあれば是非拝見したいと心待ちにしていたのである。それがとうとう現実のものとなり、ご厚意で見せて頂く機会に恵まれたのである。もうテンション上がりまくりであった。

外観はごく普通の温室
 個人宅の片隅にそれはあった。特に変わった構造でも無く、普通の大きさ・形のビニールハウスである。

中も普通の畑に見える
 中はごく普通の畑(良く知らないけど)のようで、特に変わった所は無い。

屋根もビニール一枚だけ
 寒冷地にあるようなビニールが二重になっていたり、断熱層を持っていたりする訳でも無く、これも普通の温室に見えるのである。入り口もブルーシート外側を覆っているだけで普通のビニールドアであった。

ところがである、この温室はこの真冬の2月にもネギ、キャベツ、小松菜など葉物野菜がたっぷり成長中なのである。いくら晴天率が高いとは言っても、夜の気温はマイナス20℃程度まで下がる土地柄である。どうやって野菜類を夜間の凍れから守っているのだろうか?

初めてこの話を聞いた時、にわかには信じられなかった。普通のビニールハウスで野菜類を通年栽培しているのである、それも石油や電力、もちろん温泉熱も使わずにである。 私が想像していたのは、何重にも断熱層を重ねた大掛かりな設備で、巨大な蓄熱体を擁するものであった。しかし、現物を見てみると想像とは全く異なる、ごく普通のビニールハウスだったのである。それも、かなり年季が入って所々補修痕があるものだったのである。

詳しく聞いてみたところ、このハウスは30年前に建てたもので一度も建て直していないそうである。実際、支柱などはサビだけでなく、苔まで生していたのである。ビニールくらいは何度か張り替えたのか聞いてみても、所々補修用のビニールを充てがっているだけで30年間使い続けているそうだ。触れさせてもらったけれど、特に厚いものでも無くどちらかと言えば頼りないビニールシートであった。

結局、色々見せてもらいながら詳細に話を聞いていると、このハウスは科学的な根拠に基づき設計されており、また地表温度だけに止まらず、地中の温度分布やpHなどの計測なども怠りなく行われており、その数値がびっしりと書かれた記録ノートも見せてもらった。そして、それら養分・熱量・水分そして土壌が極めて微妙なバランスの上に成り立っている、他に類を見ないハウスであることが分かり、感心を通り越して感動してしまいました。すごいの一言だ…。

この日は朝の10時だったが、畑の表面温度は24℃であった。

表皮は痛んで見えるが、中は綺麗な緑色のキャベツ
土壌改質に余念が無い
 農業に全く興味の無い私は、この作物の出来具合などは分からなかったが、自家消費以外にも一部は出荷しているらしいので、十分な品質を保っているのだろう。彼はこの30年、年間を通して葉物野菜を買ったことが無いそうだ。つまり気候の影響をあまり受けず安定した品質と収量があると言うことだろう。

 さて、私の最大の関心事であるこのハウスのエネルギー循環だが、要約すると以下の通りである。

熱・光エネルギーは専ら太陽光であり、この地の晴天率をはじめとする変動の少ない日照時間があって初めて成り立つエネルギー収支である。昼間の受光量と夜間の熱損失は、地表の比較的浅い礫層に蓄熱層が形成されており、昼間の熱が夜間に抜け切らないようである。また、水分コントロールが絶妙で、地表部分はほぼ乾燥状態にすることによって凍害を回避出来ている。また、火山灰層を養土下に分布させることによって礫への熱伝導を阻害せず、かつ植物の根の到達範囲に充分な水分を供給出来ている。さらに夜間の保温層としても機能するという、素晴らしいアイデアである。


 この地方には土室(つちむろ)という、これと同じような原理の半地下倉庫のようなガラス張りの室があるが、それより手間がかからず熱効率や熱利用状況も優れているようであった。

その後、土壌改良に関する話が続いたが、農業知識全般が見事に欠落している私にはさっぱり分からなかった、残念…。

2018年3月1日

冬眠芋

先日、とある農家の貯蔵庫を見せてもらう機会があり、なかなか興味深かったのである。それはジャガイモの貯蔵庫であった。

ジャガイモはサツマイモとは違い、貯蔵温度が0℃10℃(適温は2℃4℃)なので温度管理が楽である。つまり、保温構造の倉庫に、雪や氷と一緒にジャガイモを放り込んでおくだけで貯蔵が可能だからである。雪を使えば庫内の湿度は80~90%になるので、これもジャガイモの保管に具合が良い。

貯蔵庫は発砲ウレタンフォームの吹き付け工法で断熱層を形成している。厚みは100mmだそうで、これがコストと断熱性能のバランスが良いらしい。

その名の通り
雪とジャガイモ、と人々

断熱された倉庫の中に外から持ってきた雪を入れると、倉庫内はやがて0℃程度で落ち着き氷点下にはならない。そこへジャガイモを満載したコンテナを積み上げて保管しておくと、ジャガイモは寒さに耐えるために低温糖化現象を起こして体内のデンプンをショ糖に変化させ、さらにブドウ糖や果糖も生成するのである。

この時に若干ではあるが発熱するので、0℃近辺の雪温と相まって庫内は2℃~4℃と理想的な温度になるという、実にうまい仕組みである。したがって、庫内に運び入れる雪の量、保管するジャガイモの量の調節が重要なカギになるのである。

もし、ジャガイモの数が少なければどうなるのだろうか?

庫内の温度が0℃付近から上昇せず、断熱性能にもよるが庫内が部分的に氷点下になる恐れがある。


広い倉庫に極少のジャガイモ
これは別の施設であるが、なんらかの理由でジャガイモの量が確保出来なかったようで、庫内の片隅に身を寄せ合うように少量のジャガイモコンテナが積まれてあった。外はマイナス20℃の極寒である、このままでは凍害が起こる危険がある。

そこで、コイツの登場である!


強力助っ人、参上!
広い倉庫にいかにも頼り無さそうな超小型の家庭用電気ヒーターがたった1台だけ。

だ、だいじょうぶなのか?と思ったが、これでなんとかしのげるそうだ。  

この雪室による保存でジャガイモがどれだけ甘味が増すかといえば、この通り。
(c)2006 北海道農業研究センター
 サツマイモが嫌いな私は、甘いジャガイモもあまり好きでは無い。どちらかと言えばホクホクしていなくて火を通しても固さが若干残る程度のものが好きである。