2013年9月30日

過密スケジュール

来る日も来る日も壁塗りに追われていた。壁を塗り終えないと先へ進めないので、最優先で作業を行っていた私であるが、追い討ちをかけるように他の作業がやって来たのであった。

そろそろガスの開通検査の日がやって来るのである。今年の夏前に、非常時のインフラ確保の名目でプロパンガスを契約し、ガスの配管工事を行った。実際にガスを使い始めるのはずっと後なので、検査は(遥か先のことだと思っていた)9月に予定していたのであった。

カレンダーを見ると、検査は明日ではないか。ガスはキッチンのコンロにしか使う予定が無いので、キッチン周りを整えるだけで検査は完了するはずであった。しかしながら、コンロは購入済みだが、キッチンが無いではないか…。急遽、キッチン作りを始めたのであった。ど、泥縄…。

キッチンシンクのサイズを計り

適当に枠を作る
えっと、確かアイランド型のキッチンだったよな…。長さや幅を計り、以前に計画していた工法で作り始めた。脚部分は道南杉の柱材を使い、私達の身長に合わせて高さを決めた。天板は原野の師匠にもらったものを使う。

スケルトンキッチン!
辺りが暗くなった頃、骨組みだけのキッチンのようなものが立ち上がった。とりあえずガスの配管をコンロに取り付けてガス漏れ等の検査をするだけなので、これで十分ではないかな。出来上がったキッチン台にコンロをセットして、一部だけ見るとキッチンのような外観となった物体の写真を撮って作業を終えたのであった。驚く事に、水平がキチンと取れていた。きっとブランコ作りの成果の賜であろう…。

翌日、予定通りに朝から検査に来てくれてガスの開通検査を行ってもらった。この手の検査は法律で義務付けられているからでもあるが、検査機材や技術的な面でDIYでは難しいので助かりました。

開通!
可燃性のワラが山積みのキッチンエリアで3ッ口コンロに無事点火され、嬉しいような恐いような複雑な気持の中、無事に検査は終了しました。ただ、このままの状態でコンロを使う気にもなれないので、実際の使用開始日まで元栓を閉めてもらった。ここまでやって今月のガスの基本料金すら請求しないガス屋さん、ありがとうございます!

この後、ガス管とコンロがしっかり固定されてしまっているので、キッチンは仮置きのつもりであったがこの状態のままになってしまった。外せなくもないけど、せっかく付けてもらったんだから、このままキッチンを完成させるか…。出来るのか?

2013年9月29日

重壁

最近の建築状況はと言えば、塗るか練るか編むかである。そう、壁塗り作業に追われているのである。

普通の壁を塗っているのであれば、特に問題は生じないだろうし、そもそも近代建築では「壁を塗る」という作業は無くなっている。サイディングと呼ばれる建材を家の周囲に張り巡らせは外壁が完成し、内装用のボードを貼ってビニールクロス等を貼れば内壁が完成する。

ずっと昔は柱の間に竹で編んだ「竹小舞」と呼ばれるメッシュ状の壁のようなものを作り、そこへ壁土を塗り込め、その上に中塗り、仕上げ塗りと進んで壁が出来上がったらしい。

我が家の壁はというと、そのどちらも採用する気になれなかったので、西洋漆喰と呼ばれる技法を真似たものと、行き当たりばったりで考えた手法をミックスし、適当に作っている。


漆喰を練る
編む
塗る

塗る

塗る
漆喰の原料は石灰岩から作った消石灰や生石灰を使う。そもそも漆喰は石灰の中国語読みに日本の漢字を当てはめただけのものである。まあ、これが一筋縄で行かないというか、私の技量が全く追い付いていないと言うべきか、とにもかくにも厄介なシロモノである。

混ぜる度に粘度が異なり、その結果、塗り具合も異なる。気温や湿度に大きき左右されるものだから仕方が無いと思っていたが、消石灰の品質そのものにバラツキがあるようだ。いや、混ぜる人物の性格にもバラツキ以上の問題はあるのだが、そこはいい加減さが補っているので問題は表面化しない。やはり消石灰の問題か?消石灰ごときに責任転嫁する奴の性格が問題か…?

トロ箱一杯で55Kgの漆喰材が出来る。これを壁に塗るのだが、我が家の壁はワラである。隙間にドンドン入って行くし、凸凹が多すぎて壁がどんどん厚くなる。その結果、壁厚は5cmにも達し、55Kgの壁材は1畳程度の面積を塗り終える前に消えて行く。そして、恐ろしい程の重量級の壁が出来上がるのであった。大丈夫なのか?

 この漆喰は、近所の川底から取って来た粘土質の土をふるい分けたものに石灰等を加えたものであり、発色は専ら土の含有成分に委ねられている。そう、塗って乾くまで色が不明なのである。塗りたてはグレーっぽい色だが、徐々に白味を帯びて行き、最後はクリーム色っぽくなる。ただし、塗った場所によって微妙に異なり、同じ色の壁は無い…。

ちなみに、上記の写真では下から塗っているが、正解は「上から塗る」です。やってみると分かるけど、下から塗ると塗り終った箇所に上から漆喰が降り注いで台無しにしてくれるので止めた方が良いよ。

壁が乾いたら、上塗り作業が待っている。それも2回も…。中塗り、仕上げ塗りである。本当に塗るのか?途中でやめるのか?体力勝負のように聞こえるが、実は漆喰は塗る気温が重要なのである。あまり低温になるとうまく固まってくれず、壁を形成しないのである。そう、時間との勝負なのであった。

もう9月も終る、10月の後半は壁塗りに適さない気温になる。行き当たりばったりで塗っているので、他の人にはその手法を伝えることが出来ず、手を借りることは期待出来ない。

がんばろう。

秋も深まり

近所では秋の収穫ラッシュが始まり、牧草やトウモロコシ、おイモさんなどを積んだ大型ダンプカーやトレーラーがひっきりなしに走っている。

我が家の前のヒグマの食糧庫であったトウモロコシ畑も綺麗に刈り取られ見渡す限りの平地になり、牛に食糧を取り戻されてしまったヒグマは泣きながら山へ帰って行った(のか?)。


裏庭の牧草はロールに変身済み

規格外のおイモさん

ハート型?
何十トンものじゃがいもが収穫出来ても、色やサイズ、形などで規格品とそうでないものに分けられてしまう。どちらかといえば、規格外品の方が切り応え、揚げ応え、食べ応えが良い。先日入手したブツは二股になった文句無しの規格外品であったが、綺麗にスライスして揚げると、ハート型のフレンチフライになった。もちろん、おいしゅうございました。

う〜ん、秋は深まったが建築作業は遅々として進まない…。まあ、我が家も規格外品なので、予定通りには進まないのであろうと言い訳をしながら、おイモさんを食べながら少しづつ作ってます。

2013年9月11日

あいさつ

ここしばらくヒグマ騒動で落ち着きの無かった建築現場であるが、今年も建築作業可能日数が残り少なくなりお尻に火がつき始めた私達は、朝の6時50分に現場に到着するという気合いの入った日であった。

早速作業に入るべく現場の2階で作業服に着替えていると、妻が「外で何か変な音が聞こえる」と言う。ヒグマの罠を仕掛けたり、爆音機を設置してもらったりしたせいで、妙に敏感になっているだけだろうと思い、念のためにベランダから外を覗いてみたが何も普段と変わりが無い。気のせいだよと言おうとした瞬間、120m離れた敷地の入口付近に目をやると、なんとヒグマがこちらを見ていた。

「おはようございます」

とでも言いそうな勢いでこっちを向いてヒグマが立ち上がっていたのである。

小心者の私は「く、く、くまだー」と言いながら、一瞬何が起こったのか理解できない状況が2秒程続いたのであった。

安全な2階のベランダから見下ろす熊の姿、恐さよりカメラを持っていない残念さが先に立った。カメラは1階にあるが、取りに行くのは恐い。そうこうしている内に、ヒグマはその場を去り、敷地内から森の方へ向かって足早に去って行ったのであった。



2階の窓から見たヒグマの位置
朝の7時は私達にとっては早朝ではあるが、周囲の農家は日の出の時間帯である4時台から仕事をしているのである。とっくに太陽も顔を出している。どちらかと言えば、眩しいくらいの日差しである。そんな十分明るい時間帯に出没した熊であった。恐らく夜間10分おきに鳴る爆音機を避けつつ、周囲に人の気配の無い時間帯にトウモロコシを狙って現れたのであろう。

後で恐る恐る現場を見に行ってみたら、熊もある程度慌てていたのか少し走って逃げたような足跡が残っていた。

土にめり込む足跡
 熊が立っていた場所から撮影してみると、正面左に見える赤いポールの爆音機のすぐ横である。左方向が町道、右が国有地、正面が番外地(…、つまり私達の敷地)である。

熊が立ち上がっていた場所から
国有地はここから森の手前まで
熊の目線で見ると、国有地の先にある森から出て来て、ちょっと人間の匂いのする場所の先に大好物のトウモロコシが食べ放題の畑がある。昼間は人間(私達のことだよ)が歩いているので迂闊に近寄れないが、深夜に来れば安心して好物が食べることが出来た。しかし先週から夜になると大きな音のする恐い装置が仕掛けられたので近寄ることすら出来ない。仕方が無いので、装置が止まる朝を待って森から出て来て畑に入っていたというところであろう。

そこへ思いもかけない時間帯に私達が現れたので熊もさぞかし驚いたのであろう。建物の2階から覗く私達と目が合ってしまったので、とりあえず「あいさつ」をして慌てて去って行ったということかも知れない。

来週になると、この畑のトウモロコシは全て刈り取られる。熊も危険を犯してやって来る理由は無くなる。私達も不必要に恐れることは無くなる。そしてそのまま冬を迎えることになるだろう。

ただ、それまでは



熊は右からやって来て左の畑に入り、私達はそれと直交する道を通って建築現場に入るのである。残された数日をお互いの警戒心と行動が鬩ぎ合う日々が続くのであろう。

今度出会った時もあいさつを忘れないような関係でいたいなと、…思うか、…な?

2013年9月5日

来訪者、その後

翌日、猟友会の人と役場の担当者達が罠を仕掛けるためにやって来てくれた。

罠を載せたトラックと4WD車
 トラックの止まっている所から我が家の敷地が始まる。

我が家からこんな近いところ
罠を仕掛ける場所から我が家の森が見える。

巨大な罠を仕掛ける
6人がかりで運搬し、設置した罠。

警告の看板
この看板を見るためには、相当近付かなければならない。


熊避け爆音機
さらに翌日には、トウモロコシ畑の所有者が私達のために爆音機という熊避けの機械を設置してくれた。ありがとうございます。

この機械は、後ろに接続されたプロパンガスのボンベからガスが供給され、タイマー制御された点火装置で空気とガスの混合気体に着火するのである。爆発音は発火部分から垂直パイプを通り、てっぺんの水平部分で目的の方向に爆発音を発する仕組みになっている。

テストしてみたが、耳栓をしていても相当な音量であったので、きっとヒグマにも効果的であろう。ただ、これが設置されているのは我が家の入口なので、真横を通るときに鳴らないように祈りながら素早く通り過ぎなければならないのが難点と言えば難点である。

「30m以内に近付くな」と書かれた装置の横2m付近を通らないと敷地に入れないから…。


2013年9月1日

来訪者

今年の夏もイベントが盛り沢山であった。旧友も遊びに来てくれたし、町内の滑走路ではドラッグレースも行われた。熱気球に乗って大空を飛び、我が家を上空から眺めることも出来た。3年間も建築中の我が家とは違い、楽しい時間は着々と、そしてあっと言う間に過ぎ去って行った

楽しいこともやって来るが、そうでないモノも来るのである。

こんな道路の上に
こんな足跡を残して
どこかで見覚えのある足跡である。そう、歓迎すべきではないものだ。この足跡の先は、これも見覚えのある風景である。


そう、我が家の敷地の入口付近である。昨年は隣接する森から隣のトウモロコシ畑へ出没したヒグマだが、今年は春の森林伐採で無くなってしまった森の跡を避け、あろうことか町道を堂々と通って我が家の敷地を横切りトウモロコシを食べに来たのであった。

好き勝手に
食べ放題
連絡するとすぐさま役場の人が来てくれた。翌日は猟友会の人も来てくれたが、ヒグマも来てくれた。

翌日の足跡
どうやら、ここ一週間程頻繁にやって来ているらしい。時間差があるとは言え、同じ空間をヒグマと私達が共有しているのである。

我が家の敷地には、ヒグマの足跡を確認するための簡単なトラップが仕掛けられた。そして、私達はそれを確認しながら建築現場に入る毎日なのであった。

あと半月程でトウモロコシは収穫される。そうすれば昨年同様、もうヒグマがやって来ることも無い。仕方が無い、しばらく共存するか…。