何とも言えないこの言葉の持つ響き。
遥か遠くの誰も住んでいない土地、一般の生活圏とは切り離された区域、そんな特別な意味がありそうな言葉であるが、いざ探してみるとなかなか見付からない。
山の中に隠れるように点在する人里離れた人家にも
住居表示はある。「○○町何番地何号」という、いわゆる住所と呼ばれるものである。これに対して、番地の無いところが
番外地とか無番地と呼ばれる場所である。
住所の無い土地をどうやって買うのか疑問に思ったことがあり調べてみたことがある。ひょっとして誰も気付いていないだけで、見付けた者勝ちでその土地が手に入るのではないかという甘い動機からだった。もちろん、私のそんな妄想は、ちょっと調べただけで簡単に打ち砕かれた。
その結果、土地の登記は「
地番」と呼ばれる登記所(つまり法務局)に登録されているその土地固有の番号があり、これをもって取り引きを行うということだった。実際にここの土地を買った時も、その地番を拠り所に売買取り引きと登記を自ら行ったのであった。
つまり普通の土地には、土地登記に基づく地番と住所を表す住居表示の2種類が付けられているということである。では、地番の無いところはあるかと言えば、それが存在するのである。国有地などは売買の対象では無いので登記されたことが無いため、地番が無い。確かに地番の無い皇居には住所がある。
その逆の、地番だけがあり住居表示の無い土地、つまり番外地を探していた時の事だった。ここで驚愕の事実を知ることになった。
私達が所有するこの土地こそが番外地だったのである!
確かに登記はしたので地番は存在した。だが、未だ住んでいないので住民登録もしていないし、郵便物を受け取ることも無い。一昨年から所有している自分の土地に住居表示が無いことに全然気が付かなかったのである。
この土地を買ってから、水道工事を行った時も住所を言っても分からなかったが、「○○牧場の隣」というだけで通じたので気にしなかった。町内の業者から砂利を購入した時も、住所だと思って地番を伝えたら「そんな住所は知らない」と言われたな…。NTTの電話線の撤去を依頼した時も、「お調べしましたけど、その住所に該当する家屋はありません」と回答されたな…。
ということで、住所だと信じていた「○○ 11-2」という表記は、「地番」であって「住居表示」では無かったということだ。近所の家にはちゃんと住居表示があるので、「私の家の住所は何ですか?」という、間抜けといえばこれ以上無いと思われる程間抜けな質問をしてみたのである。すると、「そこは番外地だよ」というびっくりするような回答が得られたのである。
それから色々聞いたり調べたりした結果、もっと驚く事実が判明したのである。
我が家のあるこの辺り一帯が番外地なのでは無く、この周囲で番外地なのは我が家だけであったのである。周囲のどの方向へ行っても住居表示が存在する区域であり、そのエリアの中で我が家だけがぽっかりと空いた例外のような扱いで表示されていたのであった。
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緑色の円内の白い部分が我が家 |
この地域の住居表示は、町道の号線を基準に付与されており、基線(南北方向)を中心に西へ行けば西1線、西2線というように続き、東へ行けば同じく東1線、東2線となり、その範囲は南北に10Km、東西に1Km程度の範囲である。近所の住所は「○○基線300番2号」とか「○○基線175-3」という風になっている。図中の「A」のタグが基線の道路を表しており、点線で囲まれた部分が「○○基線」の区域全体を表している。西隣は「○○西1線」エリア、右は「○○東1線」区域。
上図の「○○基線」の区域で、我が家だけが見事に空白で表示されている。隣の牧草地も、裏の森も、熊の出ると言われているタラノキの群生地も、隣の牧場も全て住居表示実施区域であり住居表示がある。
この表示はGoogleMapの新しい機能のようで、なかなか便利である。自宅の近くを表示させて、住所の大まかな名称を検索欄に入力するとそれに該当するエリア全体が点線で囲われて表示される。「○○市××町2丁目3ー4」だったら「○○市××町2丁目」まで入力すれば2丁目全域が表示される。もし例外地域が存在すれば、上図のように白いエリアが表示される。「××町○○原野」でもしっかり表示される。
住居表示の無い場所への郵便はどうなるのかと調べてみたところ、地番の表記でも配達されるということだったので、自分宛に葉書を出してみたらものの見事に届かなかったorz。
過去に何があったのか知らないけれど、我が家だけが番外地というこの事実をどう受け止めるべきか悩むところである。希少価値があると喜べば良いのか、熊の出没地以下の扱いを受けていると嘆くべきなのか…。
住所が「原野」というのも凄いけど、「番外地」も負けていない気がする。
とりあえず、郵便だけでも届くようにしなければ…。