この土地を購入した経緯にも書いたが、ここは農家が離農した場所でありその遺物が残っていた。多少のゴミや荒れた畑、雑草などは何とか自分達の手で対処できたが、農業設備やら大型ゴミなどは手の着けようも無く大変困っていたのである。
元々、原野や山林などの人の手の入っていない広大な土地を探していた私達にとって、離農跡地を購入するとは思ってもみなかったので、遺物に関しては全く想定外の状況であった。もちろん、それを上回るメリット、つまり素晴らしい景観と周囲の環境を得るためのトレードオフであったので、納得の上で契約をした。
契約時にこれらの処分をお願いしたのだが色々行き違いもあり、前所有者は「大丈夫だよ」という私に取って何の意味も無いセリフを残して譲渡が完了したのである。もちろん、全然大丈夫では無かった。移動や処分の方法がわからず、かと言って自分達で運べる大きさでは無い。困り果てたまま1年が経過して行った。
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農業機械へ給油するタンク |
たとえばこのタンクである。軽油が500L入る巨大タンクが2つ。押しても蹴ってもビクともしない。おまけに中には軽油がたっぷり入っている。もちろん、私達には使い道すら無い。
ところが、この土地を買ってから1年程経った頃、突然謎のおじいさんが現れてこのタンクを譲って欲しいと言うのである。渡りに船、捨てる神あれば拾う神あり、棚からボタ餅、願ったり叶ったり。なんだか良く分からないけれど、私にとって大問題であったものがあっと言う間に片付いたのである。
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数日後、トラックで引き取りに来てくれた |
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トラクターで楽々持ち上がるタンク |
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設置台などの付属品もきれいに持って行ってくれた |
おじいさんはタンクの代金を払うと言ってくれたけど、お金を払いたいのは私の方である。お金は要りませんと言うと、それじゃ悪いからと言って何か他に困っていることは無いかと聞いてくれたので、私はちょっと迷ったが遠慮せずにその次の問題を相談してみた。
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森の中に放棄されていた |
土地を買ってから雑草を何ヵ月もかかって苅っていたら、森の奥から農業用のビニールが大量に放置されているのが見付かったのである。重さは数百キログラムもありそうで、こちらも押しても蹴ってもびくともしなかった。これをおじいさんに頼んで運び出してもらおうと思ったのである。彼は嫌な顔ひとつせずに全てを運び出して産業廃棄物業処分場へ持って行ってくれた。
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倒木や周囲のゴミまで片付けてくれた |
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きれいさっぱり |
処分費用はもちろん私が払ったが、それ以上にかかったであろう運搬費用は受け取ってくれなかった。ちなみに重さはちょうど1トンであった。そりゃ、蹴っても動かないわな。
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1枚あたり300Kgのコンクリート板 |
この後、敷地内の謎のコンクリート板を数十枚、不要な灯油タンク、コンクリートで出来た謎の棒(基礎石みたいなもの)など、全てを処分してくれた。もう感謝の言葉も無い。後日、菓子折を持っておじいさんの自宅までお礼に行ったが、彼にとっては朝飯前のような作業だったそうだ。私が1年以上困り続けていたのが馬鹿みたいだ。
とにかく大きな難問がいとも簡単に解決したので、驚くと同時にこの親切なおじいさんに感謝の気持で一杯であった。