2016年12月29日

家作り再開(8)

つかみ所の無い話。

歪んだ壁も何とか矯正出来て組立て作業を再開出来た。しかし、パネル類が大きく重い、さらにこれを立てかけながら順番通りに組み立てなければならないのである。組立て順序を無視すると、あとで辻褄の合わない箇所が必ず生じる仕組みになっている。

通常、プロは2人で作業を行いとても手際良く組み立てていくのだが、これを素人がそれも一人で行うと困難に直面するのである。パネルは隣のパネルとフレームを介して接合される、つまり次のパネルを準備しながら組立て作業を行わなければならないのである。

もうコントの世界である。パネルを立てて、すかさず次のパネルを立てる。フレームに挟み込んでいる間にパネルが外れて倒れてくる。左手で左のパネルを押さえ、右のパネルを足で押さえ、右手でフレームを持ち、その両方を手際良く接合…、できない。なんとか2枚のパネルを接合し、3枚目のパネルを持っていると後ろから突然1枚目のパネルが倒れかけて私の後頭部を直撃するのである。途方もない脱力感。

周囲の壁や柱にアンカーを打ち込み、パネルを紐で仮止めしながら作業を行うことにした。もうユニットバスを組み立てているのか、ヒモだらけの操り人形を作っているのか分からない状態である。それでも何とかパネルを組み上げ、やれやれと思って出来上がりを見ると…、ヒモをつけたままパネルと一緒に組み立てていた…。再びパネルを外し、ヒモを外し、パネルを組立て、と同じような作業を無駄に繰り返すこと4回…。


2枚のパネルと床の接合
接合用パッキンで漏水対策
4面と床が接合出来れば、あとはそれほど難しい所は無いはずであった。そう、全てが正確に組み立てられていれば、残りの部材は開いている隙間にスッポリとはまるはずである。しかし、素人工法はどうしてもズレが生じほんのちょっとのことで入らないのである。叩いて入るものもあれば、パネルの接合を緩めて調整しなければならないものもある。

それでも何とか壁と天井を組み上げたのである。そして残るはドアユニットである。これはドアと枠、そして取り付けフレームが既に一体となっており、組み上がったユニットバスにはめ込めば、後はネジ止めして完成である。しかし、ここでもギリギリ入らなかったり、力ずくで入れても何だか歪んでいるような感じなのである。うまくいかない最大の理由は、やはり一人で作業しているので、ドアを持ち上げた状態で左右と前後のバランスを取りながら固定するのが容易では無いからである。

ずれてしまっては、お湯がかかったときにドアから外へ水漏れしてしまうので、やはりきっちり組み上げる必要がある。外からしかはめ込むことが出来ないのだが、中からもバランスを確認しながらの作業が必要になるという、ちょっと面倒な作業である。外からはめて、ドアの隙間から中へ入り、ドア枠の縁を持って引っ張るようにすると、何度かトライしたのちやっと正しい位置にはまってくれたのである。半開きのドアから素早く外に出て固定ビスでドアを取り付けることに成功した。これでドアは完成である。

さっそく中へ入って内側から最後の確認を行う。左右良し、上下良し、隙間無し、うまく行ったようである。ドアもぴったり閉まって隙間もガタつきも無い。

非常に満足した私はその次の作業へ移るべく外へ出ようとした。しかし、出られないでのある…。

それは、内側からだと引き戸になるこのドアに取っ手を付けていなかったのである。 また、このドアは出っ張り部分がほとんど無くツルツルしているのである。ドアの小さな段差部分を指の先でつまんでみても、ドアを開けるだけの力が加えられないのである。

凹凸のほとんど無いドア内側
最初は「あれっ?」と思った程度だったが、何度繰り返してもドアを開けられず、次第にあせり始めたのである。一人で作業をしているということは、助けを呼んでも誰もいないということである。何とか自力でここから出ないと永久にユニットバスの住人である。上を見上げると天井には開口部があり、人が出入り出来る大きさではあるが、天井まで2m以上あるので届かないのである。第一、天井には体重を支えるだけの強度は無いので、そもそも無理である。ドアを蹴破ろうかとも考えたが、ここまで苦労して取り付けたドアを破壊するのは嫌だ。

それからしばらく、爪の先でドアの凹部を少しづつ引っ張ったりドアの折部に指を入れたりしながら格闘していた。掴む所さえあれば何の苦労もなくドアを開けられるのに、つかむところが無い、つかみ所が無い…。

脱出後、最優先で取っ手を取り付けた!

それから数分、内側のロック部分を両手の爪の先で掴み、何とかドアを開けることが出来たのである。脱出後、急いで取っ手を取り付け、次の作業へと進んで行ったのである。

2016年12月26日

家作り再開(7)

何でも無謀に素人作業で進めている家作りだが、中にはプロに依頼すべきかどうか迷うものもある。その中のひとつにユニットバスがあった。

ユニットバスは試しに購入してみると分かるが、ユニットバス本体は入手出来ても「施工説明書・工事手順書」は入手出来ないのである。少なくとも正規ルートでメーカーに問い合わせても、ユニットバスを組み立てる手順や方法は素人には教えないということになっている。

ユニットバスを購入すると、パネルやドア、様々な部品がバラバラな状態でトラックに積まれてやって来る。部材には番号や記号が振られており内容物も容易に想像できるものから、ただの記号が羅列されているだけであり現物を見ても良く分からないものまである。精密機械や動力源を持った工作機械では無いので、部材を見ればある程度組立て方法は想像は出来る。しかし、想像は出来ても、何をどの手順で組み立てるべきかは分からない仕組みになっている。

メーカーは、ユニットバスに品質保証を付けているのだが、その中には「水漏れ保証」と言ったその品質が施工によって大きく左右されるものが含まれている。これが、私のような興味本位だけで組立てを敢行するといった無謀な行為から自社製品を守るために、施工に関する資料を提供しないという防御策で対応しているものと思われる。しかし、正規ルートがダメなら、そうでは無い経路から入手すれば良いだけの話である。

ということで、施工説明書から細部の寸法まで記載されたCAD図面まで入手したのであった。

私の名前と日付が入った、形式的にはオーダーメイドの図面

ここまで準備をしておきながら、作業が非常に面倒だからという理由で着工を後回しにしながら、ついに3年の年月が流れていったのであった。

当時は、どうせユニットバスの部材だから腐るものでも無いし、メーカー保証なんて最初からあてにしていないので関係ないやと思っていたが、どうやら3年間も寝かせておくものでは無かったようである。


説明書通りに骨組みを組み立てる
図面を見ながらフムフム、なるほどこーやって、あーやって
ユニットの壁とは言え、一応は構造材なので対衝撃性や耐水性、防錆加工などが施されており、それなりの重量物なのである。それを3年間も部屋の片隅に放置していると、予想外の事が起こったのであった。

それは、組み上がったフレーム構造に壁をはめ込んでいた時に判明した、何かがおかしいのである。それぞれの寸法、位置、順序や上下など、取り付け方に何の問題も無いのに何故か壁がはめられないのである。何度やっても同じであった。何かおかしい…。

一人で持ち上げるにはギリギリの重さである2m×1.2mの壁をまた床の上に戻し、じっくり壁を点検することにしたのである。そしてその結果、驚愕の事実が判明したのである。

壁が3年の月日と自重で反ってしまったのである。

え?

微妙に反り返っている壁

懸命に歪みを矯正中
片手で持てる大きさのものなら、たとえ力任せでも反りや歪みは元に戻すことが出来る。しかし、自分の背よりも高い重量物にどうやって挑めと…。

いろいろ考えて、壁を重力に対し歪んでいる逆の方向に置いて自重で元の形に戻るように試してみた。しかし、この方法だと3年はかかからないにしても、途方もない時間がかかることになる。仕方が無いので、四隅にスペーサーを入れたままの状態で、歪んでいる部分に力を加えて変形を試みたのである。

その結果、壁の中の構造物が弾性限界を越えたような異音を発し、それが可塑性の物体であることを示したのであった。

簡単に言えば、押したらミシっという音がして、壁の中が取り返しの付かない困った状況になりそうだということである。

これで、局所的に力を加えることはダメだと分かったので、今度は全体に力を加えるように作戦を変更したである。それは、一辺を床に置いたまま対辺を両手で持ち上げた状態で、連続して重力方向に運動量を変化させるのである。これにより、壁の質量分布は正規分布であるのに対し、各部の歪み率を加重平均すると応力等高線が重心を軸に等距離に分布することから、壁の重力方向の移動速度がゼロになったとき、慣性でもっとも歪みの大きい所にもっとも大きな応力がかかることになるのである。また、その変化量は歪み率と正の比例関係にあるので、各部の限界弾性までの閾値がそれぞれ近接していることからも変化量を微分しても常に正の値(たぶん定数)を取り極点は存在しないはずである。

簡単に言えば、壁の端っこを持って上下に振ったのである。こうすると、歪みの大きい所にうまい具合に大きな力がかかって壁が壊れる前に元の形に戻ってくれそうだと言うことである。ただし、壁はとても重いのでとても疲れるのである。ふー。

なんとか取り付けられた
 このように、本来の組立て作業とは関係の無い部分で思い切り時間を浪費しながらも、何とか組立ては進んで行ったのである。

つづく。

2016年12月23日

鋭利先端謎氷

ある朝、いつものように散歩を終えてLop-Nurの餌の準備をしていた。

何か変?
毎日氷点下の外気温なので、朝になるとLop-Nurの水は完全に凍りついており、氷を割って取り出し新しい水に入れ替えるのである。そして今朝も水を入れ替えようとしたら、そこには見たことも無いような現象が起こっていたのである。

何かとんがったものが… 
どこをどうやったらこんな凍り方をするんだろう?外気温がとても低かったから、何かのきっかけで氷が変な方向に成長したんだろうか?そういえば昨夜は風が強かったな…。

一瞬Brinicleかと思ったほどである。 英国の国営放送のBBCが撮影した動画を見ると、氷の成長方向が異なるだけで似たような現象に見えなくも無い。

氷を取り出したところ
ツノには気泡が見える
やっぱり不思議な凍り方だ…
 この現象を発見してから3週間、あーでもない、こーでもないと色々考えても答えが分からずモヤモヤしていたが、今日やっと解明出来ました。

あー、すっきり!

家作り再開(6)

逆の逆はダメという話。

その水道管の適合ネジを調べていたのは4年前であり、それに合わせて給湯ボイラーやユニットバスなどの購入を始めていた。そして、それぞれを接続する金具(継手)も購入していたのである。

その後、家作りは遅々として進まず、特にここ1、2年は中断されたままであった。当然のようにあの面倒な水道管の規格など、忘却の彼方であった。購入した部材を久しぶりに見たときは、何がなんだか分からなかった程である。

この9月中旬から突如再開された家作りだが、この水道管作業も当然のように開始されたのである。排水の配管に関しては、数年前に綿密に計算した記録が残っており、記憶が風化しておりまるで他人が作ってくれた設計図のようであったが、数mm単位で経路、接合部、それぞれの長さや取り合いが書かれてあったので順調に進めることが出来た。

水道に関しても、それぞれのネジがどこに接続されるかも記録されていたので、現物を合わせながらこちらも作業は順調に進んだのであった。そして全ての接続が完了し、水が問題なく供給されたのを確認して給湯ボイラーの試運転を開始したのである。ところが、前回書いたように接続に問題が無さそうなのに水は出るけどお湯が出ないというトラブルに見舞われてしまったのであった。

理不尽な接合部
長い調査の結果、この部分に問題があることが分かったのである。この部材は「止水栓付き逆流防止弁」とか「止水栓付き逆止弁」という名前である。この部材も色々種類があったが、嫌な予感がしたのでちょっと高かったがメーカー純正の物を購入したのである、4年前に。

この部材は、上の写真の白いハンドルの付いた銀色の部分である。その上の金色は架橋ポリエチレン管との接合アダプタ、下の銅色部分は給湯ボイラーの接続部である。おお、金銀銅…、さすがオリンピックイヤー。

給湯ボイラーから出ている接合部はRネジである。そう、テーパー型の外ネジである。そして問題の逆止弁は一方がRcネジ、他方がGネジの外ネジである。なぜ両端で規格の異なるネジが使われているのか定かでは無いが、ボイラーの施工説明書を読んでもここに接続するように書かれているし、私がここで異議を唱えても何の意味も無い。そして、それに合わせるため、逆止弁の後端に合うGネジの内ネジタイプの架橋ポリエチレン管アダプタを購入していた。

そして、この逆止弁を上図のように接続すると、何の問題も違和感も無くぴったり接続することが出来たのである。この接続に問題があるとは全く予期していなかったのである。

そう、お湯が出なかった原因は、この逆止弁の取り付け方が間違っていたのである。

え?

平行とテーパーが混在する中、内ネジ外ネジを見事に組み合わせて接続出来たこの取り付け方が間違っていたなど想像もしなかったのである。しかし、見落としていた問題がひとつあったのである。それは水流である。

上部の青いパイプから水がやって来る。逆止弁を通り、ボイラーへ供給されるというのが水の流れである。この写真だと上から下へである。ところが、逆止弁の側面に矢印が書かれてあって、それは下から上へ「↑」と示されてあった。

逆じゃん。

矢印にあわせて取り付けようとするとGネジとRネジが逆になって、そもそも取り付けが出来ない。かと言ってそのままでは矢印が逆である。試しに逆止弁を外して空気を送ってみると、見事に矢印の方向だけの一方通行であった。

?????

考えた末に出した結論は、「逆止弁には2つのタイプがあって、矢印の方向だけが逆になっているものがある」であった。メーカー純正の物を買ったと信じていたが、良く見るとこの部材には型番の刻印が無く、購入したのが4年前ということもあって、きっと純正品を買おうとして違うものを買ったのだと結論したのであった。

早速、40Km離れた大型ホームセンターに出向いて逆止弁を探したが、何件か回ってやっと一つ見つけることが出来ただけであった。それも矢印が手持ちの物と同じ向きのものであり、何の解決にもならないものであった。係の人に説明し、取引業者にも問い合わせてもらったが、水流だけが逆の逆止弁は無いということであった。

仕方が無いので、今渡こそメーカー純正品を買うことにしたのである。ところが、取扱いが無いだの、取り寄せに数週間かかるだの、一筋縄では行かなかったのである。細かい事は省略するが、そんな紆余曲折を経て、思いっきり時間を浪費したのち、やっと入手したその純正部品は…、

手元にある部品と全く同一のものであった…。

が~ん!同じじゃん。矢印もきっちり逆のままだ。まったく時間を浪費した上に、使えない逆止弁が1つ増えただけという結果…。

そこで色々な施工業者に問い合わせをしてもらって調べた結果、得られた結論は2つ、ひとつは逆止弁をつけない施工をする業者が「無くても大丈夫」というもので、ふたつ目は「それぞれ変換アダプタをつけて何とか取り付ける」というものであった。

なんかしっくり来ない解決方法だなと納得行かない私だったが、既に架橋ポリエチレン管とG外ネジの継手を接続してしまっているのでもう変更は出来ない。両端にアダプタを挟んで取り付けるしか無かったのである。

冗長さ満点のアダプタ
変換の変換の変換を変換するもの達
 左がRc外ネジをG内ネジに変換するアダプタ、右がR内ネジをG外ネジに変換するアダプタ。もう書いてるだけで何がなんだか分からなくなって来るが、なんとか目的を達成出来そうな物体を入手したのである。


G内ネジ(金色)をR外ネジ(銀色)に変換したところ

Rネジなのでシール材(白い物体)が必要になった

反対向きにつけた逆止弁
ボイラーのR外ネジをG内ネジに変換
完成?

結局、「給湯ボイラー」→「R外ネジ」→「R外ネジ・G内ネジ変換アダプタ」→「G外ネジ側逆止弁」→「Rc内ネジ側逆止弁」→「R外ネジ・G外ネジ変換アダプタ」→「G内ネジ継手」→「架橋ポリエチレン管」という、お前はピタゴラスイッチかよと思うような、ぶっさいく極まりない辻褄合わせと大人の事情をダブルで体現したような物体に仕上がったのである。

こっちの方が自然に見えるけどな…
 何かが間違っているような気がするが、とにかく止水栓付き逆流防止弁は当初の反対向きに付けることが出来たのである。

エア抜きモードで試運転中

結局、逆止弁を取り付けるのに要した時間は30分程度、対してそこに辿り着くまで浪費した時間は20日間、10月も終わりに近付き冬の到来前にようやくボイラーからもお湯がたっぷり出て来たのであった。

それにしても、逆流防止装置を逆に付けるという、逆の逆はダメという貴重でも何でも無い経験であった。

2016年12月22日

水道管のトラウマ

私が以前勤めていた会社は、いわゆる外資系の会社であり本社はカリフォルニアにあった。非常に変な会社で、合理的というかドライというか日本の慣習に従うつもりはさらさら無い組織であった。

成果さえ出れば細かな規則は不問、というより就業規則そのものが無かったのである。このあたりは私と非常にウマが合う組織であった。私は気の向いた時に出社し、気が済むまで仕事をし、気が乗らなくなると帰宅、働く気分になれない日は出社しないという自由奔放な生活を送っていたのである。入社の翌月、通勤さえも面倒になってしまった私はこの会社のビルの斜め向かいのマンションに引越して、徒歩通勤15秒、ドアからドアでも1分という至近距離に住んでいた。会社のコードレス電話の子機を自宅に持って帰っても通話可能な距離であり、傘も要らないお気楽な生活であった。

仕事の殆ど全てがアメリカと歩調を合わせていたので、時差の関係で出勤時間は夕方頃になり退社は明け方になることが多かったのである。そして、サンクスギビングデーからクリスマスまでのホリデーシーズンは休暇気分でゆっくり仕事が進んだが、年末年始は逆に日本のような雰囲気は皆無で、元旦もバリバリ働いていた。

忘れもしない1月3日午前4時50分、自宅に戻った私は音楽を聞きながら夕食(なのか?)の準備を始めようとしていた。とりあえずビールでも飲むかと、栓を開けた瞬間「ポン、プシュー」と言ういつもの音に続いて、「バシュッ、ドドドド、バシャーッ」というとても大きな音がしたのである。一瞬何が起こったのか理解出来なかったが、その音は止まることも無く続いており、それは浴室の方から聞こえて来たのであった。

恐る恐る廊下奥の浴室の方を見ると、そこには破断した水道管とそこからすごい勢いで吹き出す大量の水であった。茫然自失。1分もしない内にその水は川のように流れて来て、瞬く間に3LDKの全ての部屋が床上浸水したのである。

私はエレベーターを待つのが嫌という理由で、10階建てのマンションの2階を選んで住んでいた。一階は駐車場なので、夜中に室内で踊って騒いでも誰にも迷惑をかけないで済むという、とても恵まれた環境であった。しかし、私の部屋の奥にある配管エリアには、2階から10階までの各部屋に給水するため、普通の家にある何倍もの太さの水道管があり、その一部が何故か部屋の中に露出していたのである。そして、その太いパイプが突然外れてその太さと同じ水柱が床から天井まで届く大噴水となって我が家を襲ったのであった。

正月の夜明け前、こんな時間にどうすれば良いのか分からなかった。元栓がどこにあるのかも知らないし、管理会社の電話番号も知らなかったのである。途方に暮れた私は、ふと最上階に大家さんが住んでいることを思い出し、急いで玄関のベルを鳴らしたのであった。正月気分で寝ていたであろう大家さんは驚きながらも急いで駆けつけてくれたが、彼らが元栓を閉じた時には既に室内はプールのようになっていたのである。プカプカといろんな物が浮いており、まるでマンガを見ているようであった。

低い位置にあった電化製品はほぼ全滅、家具も全て下部は水につかり、無事だったのはベッドの上の布団とハンガーにかかっていた服くらいのものであった。寝ることも出来ず、また世間は正月モードなので引越し先を見つけるのも大変であった。仕事が忙しかったので会社に寝泊まりしながら、仕事の合間に正月ムード漂う不動産屋めぐりをして、ようやく4日後に700m離れた所に転居先を見つけたのであった。

このような、二度と経験したくない出来事があったため、私は水道管を見るとえもいわれぬ不安と不信を感じる体質になってしまったのである。


家作り再開(5)

相手は誰なんだ!という話。

水道管の規格には非常に複雑なものがあり、その存在理由が分からない限り理解し難いものが多いのである。その中で難しくは無いが、なんとも腑に落ちない規格がある、それはネジである。

日常生活を送る中でも「ネジ」の存在を意識することは少なくない。いや、少ないかも知れないな…、まあ良い、少なくないことにしないと話が終わってしまう…。

一般的にネジはネジ自身とそれと対になる受け手がある。ねじ込んで行く方が外ネジ、ねじ込まれる方が内ネジと呼ばれている。 それぞれ、ネジ山が径の外側に刻まれているか内側かの違いで、ペアで用いられる。

さらに、ネジ山の作り方で平行ネジとテーパーネジに分けられる。前者は日常生活で良く見かけるタイプのネジで、ある一定のところまでほとんど抵抗無く締まって行き、締め付けるものに当たった時点で回す力が必要になるもので、対象物を締め付ける目的で用いられる。ネジが規定の力でこれ以上回らないという所まで回す必要がある。

それに対し、後者はネジ自体が先へ行くに従ってやや細くなっており、ネジが対称物に全部入ることなく、途中で抵抗を感じ始めるポイントがあり、その辺りで締め付けは終了である。そしてその範囲が比較的広いため、ある程度締め付ければ任意の場所で締め付けを終了出来る。

つまり、平行ネジは決められた位置まで回す必要があるのに対し、テーパーネジはある程度締めればその先は任意の角度・位置で回すのを止められるという特徴がある。

日本建設連合会の説明

意識をしないで両者を使用していれば、その違いを感じることはあまりないが、 水道管やガス管の配管をしているとその必要性に迫られるのである。水道管も直線状であれば特に問題は生じないが、直角に曲がる部分のネジであれば、その曲げる方向に管が向いたポイントで締め付けを終了出来ないと、管はあらぬ方向を向いてしまう。水道の蛇口を考えれば分かりやすいかも知れない。蛇口も取り付けはネジ構造になっているが、これを水道管にねじ込んで行って吐水口が真下に向いた位置で止めないと甚だ使い難いものになってしまう。

このように、ネジのタイプで「平行」「テーパー」の2種類と、それぞれのペアとなる外ネジと内ネジがある。ここまでは単純明快で何の問題も無い。ところが、水道にはさらに別の種類のネジがあり、分かっている人には何の問題も無いが、私のように何の知識も無い状態で調べると、めまいがしそうになるのである。

平行ネジはGネジと呼ばれ、それぞれ外ネジ(雄ネジ)と内ネジ(雌ネジ)がある。テーパーネジはRネジと呼ばれ、それぞれ外ネジ(雄ネジ)と内ネジ(雌ネジ)があるのは同じだが、それぞれRネジとRcネジと呼ばれている。

前者はどちらもG、後者はRとRc、 なぜ????

G外ネジはG内ネジと組み合わされる。RネジはRとRcがペアであり、R同士やRc同士は接続できない。もちろん、GとRもタイプが異なるため接続が出来ない。ここまでは良い。ところが、水道のネジにはさらに別のタイプのものが存在するのである。

それはRpネジとPjネジという面倒くさい名前のネジ達である。

Rpネジは「テーパ雄ネジ用平行雌ネジ」という定義のネジで、それ自身は平行ネジで内ネジである。しかし、組み合わせる相手はテーパーの外ネジなのである。今、平行ネジとテーパーネジは組み合わせられないと書いたばかりなのにもかかわらずである。

Pjネジは「テーパー雌ネジ用平行雄ネジ」という定義のネジで、それ自身は平行ネジで外ネジである。こいつはテーパー雌ネジにも使えるが、平行雌ネジにも使えるという代物である。しかし、上記のRpネジは平行雄ネジには使用出来ない。

という、全くもって理不尽とも言える規格なのである。

日本建設連合会の資料には、

という具合に、ぴったり適合するものと、使用可、使用不可という組み合わせがあり、可/不可の2択では無いのである。

グダグダと書いているが、要点は「私が必要としているのは何ネジなのでしょうか?途方に暮れています」状態だということである。


全ての接続部分を自分で決められるのであれば何の問題も無い。適当に組み合わせの可能な規格のものを選択すれば完了である。しかし、ユニットバスや給湯ボイラーなどのように「ここには○○ネジが使われています、これに合う金具で接合するように」と、相手から指定されているものはそれに合うものを自力で探し出す必要がある。

ここでプロは幾多の経験から特に悩むことも無く、実に適切な部材を調達し工事を行うのであるが、悲しいかな素人の私は右往左往してしまうのであった。

つづく。

2016年12月21日

家作り再開(4)

無事に水道管が接続され、家の各所に水が供給出来るようになった…、はずである。

最後の点検を終え、いよいよ開栓である。ここは寒冷地なので、水を止めるときに家の外にある水道メーター横の元栓を閉める必要が無く、宅内にある凍結防止栓のレバーを引くだけで水を止めることが出来て便利である。まあ、場所が違うだけで同じ動作だけどね。

元管から架橋ポリエチレン管、架橋ポリエチレン管同士の接続、繋手金具と水栓金具の接続、さらにその先の分岐など、およそ50箇所の接続部分がある。そして、その全てを素人の私が適当に接続したのである。そして、これまでの経緯を鑑みると、このまますんなりと済むはずは無い…。

覚悟を決めて元栓を開けて、耳を澄ます。グボボボボと鈍い音を立てて水が上がって来る音がする。その後間もなく家の中でポタポタポタ、ポトポト、シューシューと音が響いたのである。案の定、水漏れである。

恐る恐る音の出所を見ると、「ポタポタポタ」は蛇口の締め忘れであった。キュッとひねって水は止まった。「ポトポト」はシャワーの接続金具のパッキンの入れ忘れであり、パッキンを入れて組み直せば水は止まった。「シューシュー」はトイレの止水栓からであった。これは管の中の空気が漏れる音で、空気が出切ると当然のように水がポタポタ漏れて来た。しかし、良く見るとここはメーカーが出荷時に接続して来た部品である。そしてそれはテーパー管にも拘らずシール材を使った痕跡が見当たらないのである。欠陥品?

これは直管、つまり真っ直ぐで表面がツルツルのパイプであり、特殊な工具が無ければ締めたり緩めたり出来ないので、おそらくメーカーはこの部分だけは接続した状態で出荷したのだと思われる。でもその部分に不具合があれば何の意味も無いじゃないか…。

さらにこの部分は室内側に取り付ける物なので傷がつくと目立ってしまう。まあそんな細かいことは気にしても始まらないので、武骨なパイプレンチを使ってパイプの表面をガチガチと大きな傷を付けながら外し、シール材を巻いてさらに傷を増やしながら元の位置に締め直したのである。もう表面の化粧メッキは傷だらけであった。

これで全ての水漏れは直った。次は給湯ボイラーである。

ボイラーと消化器
 水道は多少不具合があっても水漏れ程度しか起こらないし、落ち着いて対応可能である。しかし、ボイラーは、当たり前だが水道、電気、そして灯油パイプが接続されているのである。さらに灯油パイプは480リットルタンクに接続されているので、万一出火でもしようものならそれを止める術は無いのである。

とりあえず消化器をそばに置いて、作業を始めることにした。この消化器で延焼を防ぐことが出来るのか不明だが、表面に「あんしん」と書かれているので何とかなるかも知れない、ならないかも知れない…。「あんしん」って「安心」のことだよね?「暗心」や「闇辛」「暗震」だったら嫌だな…。

意を決してボイラーの試運転を始めることにした。ボイラーの工事説明書に従ってまずはボイラーの止水栓を開ける。管の中で水がちょっと動いた音がした。水漏れも無く、とりあえず水道管とボイラーの接続は問題無さそうである。

その次は「お湯の蛇口をひねって水が出ることを確認」である。つまり、水道からボイラー内部への導水テストをすると言うことである。何の問題も無さそうなので気楽にお湯の蛇口をひねってみた。

ドキドキ…。

うむ、何も出ない。うんともすんとも言わない…。試しに他のお湯の蛇口をひねっても結果は同じであった。がーん、何が起こったのか不明である。

中を開けても分からない
水道管の接続を何度も見直したが問題は無さそうである。お湯の配管の問題かとも考えたが、全てのお湯の蛇口から何も出ないことからも、どうやらボイラーから水は出て行っていない様子である。ボイラーの中も開けて見たが、原因はさっぱり分からないままである。

この日の作業はこれで終わることにし、とりあえず続きは明日以降へ持ち越すことにした。しかし、翌日も原因が分からず、何日かを無駄に過ごすことになったのである。そして数日後、驚愕の事実が判明したのである。

つづく。

2016年12月20日

家作り再開(3)

この家の水道管は歴史的な理由で複雑に組み合わされている。

最初は、この地区の沢から湧水を引き簡単にろ過して水道水として供給する「簡易水道」というシステムを利用していたらしい。塩素消毒をしていなかったようで、いわゆるカルキ臭が全くしない美味しい水だったらしい。また、そのせいかどうかは不明だが、この家には水道の凍結防止装置が設置されておらず、前の家主がこの家を売りに出した時に急遽取り付けたようである。そのせいで、家の中と外の水道管は古く、その中間の部分だけがポリブデン管という最近流行りのプラスティック製になっていた。

私がこの家を購入した2010年7月、その2ヶ月後にこの水道は廃止されたのである。もちろん、売買契約時に告知されていた事項であり予定通りではあった。まだ改築中で居住していないとは言え、水道が無い訳にもいかず、町営の水道システムと接続することにしたのである。町の指定業者に依頼して家からせっせと地面を掘り進み、113m先の最寄りの水道管まで深さ2mの溝が完成し、この部分の水道管も新しいポリブデン管に置き換わったのである。

残るは家の中の配管であり、これは古い金属管のままである。この部分を新しい物に替えれば、我が家の水道管は全て21世紀製になるはずである。ここは水道メーターより後方にあるため、工事を行うための資格や許可は必要無い。意を決して(単なる思いつきで…)自力で工事を進めることにしたのである。

それから幾年月が過ぎ去り、2016年9月、やっと重い腰を持ち上げて工事を始めたのである。

どれだけ重い腰なんだ…。

この工事が遅れた理由はいくつかあるが、やはり最大の理由は私には水道に纏わるトラウマとも言うべき恐ろしい経験があるためである。その話はまたいずれ。

水道工事に限らず、我が家の工事は例外、想定外、果ては問題外という、一筋縄では行かないことが多い。しかし、水道は公営システムに接続されているものなので、何かあれば影響は外部に及んだり、影響が内部に向かった場合は家が水没する危険性すらある。

さて、この工事を行うに先立って水道管の規格や仕様、工法などを調べてみたが、め、めまいが…。

一番多く目にするサイズの水道管は外径が21.7mmであり、管種によって13Aもしくは15Aと呼ばれ、、B呼称だと1/2と呼ばれ、通称は四分(よんぶ)である。もちろん、どれも呼び名が異なるだけで同じサイズの管である。う~む、意味がわからん。

我が家の水道管は外径27.2mm、20A、3/4、通称「六分(ろくぶ)」であり、業者は「しぶさん」と呼んでいる。「通称」の立場が台無しである。

一応、蛇口から伝って行って全ての管のサイズを計り、それに合わせて新しい管の部品を購入して準備をしていた。そしていよいよ古い水道管を撤去し始めたのであった。

床上の古い管は全て20Aだった
 管は20A,接続金具も20A対20A、その先の管も20A、と順調に管を外す作業を続けていた。

床を貫く管も20A
 そして床下へ潜り、苦しい姿勢で最後の管の撤去作業へと移って行った。

深さ142cmの床下
 管を撤去する度にその直径を確認し、私の想定通りに作業が進んで行った。こんなに順調なのは本当に久しぶりだ。なんか嫌な予感がしないでも無いが、まあ問題無く撤去と管接続はうまく行くだろうと安心していた。

そして、最後の古い管を外してみると…。

そこに見えたのは、なんと20Aと13Aを接続出来る変換アダプタの存在であった。えっ?

そう、ここまで全て20Aだったのだが、最後の最後に13Aに変換されてしまっていたのである。今、目の前にある地面から生えている水道管は13A、撤去した水道管は20A、そして準備していた新しい水道管の繋手金具はもちろん20A…。

床下の暗闇で途方に暮れていた…。

急遽購入した13Aエルボ

まあ考えていても仕方が無いので手持ちを確認してみると、13Aのオスアダプタならある。接続すべき水道管は13Aのオス。急遽ホームセンターへ走り、13Aのオスとメスを変換するエルボという金具を買って来て、無事に13Aの架橋ポリエチレン管と我が家の水道管が接続されたのである。

なぜ、最後の水道管のサイズが分からなかったのかと言うと、下の写真のように巨大な断熱素材で包まれており、その姿が見えなかったからである。そして、その直前まで同じサイズで管がつながっていたので、この隠れている部分も同じサイズであろうと油断して確認しなかったのである。

巨大断熱素材に包まれていた13A水道管
土壇場で変更を余儀なくされた作業であったが、それでも何とか水道管が接続されたのである。そして計画通り、凍結防止用ヒーターを接続し、水道管の状態を監視する各種センサー類を取り付け、作業は終了したのである。
ヒーターとセンサー類を接続
計画から6年、やっと古い水道管の撤去作業が終わり、我が家の水道システムは全て近代式になりました。めでたし、めでたし…。

ちなみに、このセンサー類はコンピュータに接続されており、27秒毎に管の温度を計測して水道管が凍結しそうになると自動的にヒーターのスイッチを入れて、凍結の心配の無い温度になると電源を切ってくれるのである。これで水道管凍結を回避できる…、はずである。

2016年12月14日

家作り再開(2)

枝を隠すなら森の中である。

素人が家を作っていると、不手際が多く時間を浪費することが避けられない。それは、工具類が見当たらないとか、買ったはずの部材が行方不明になって、それらを探し回るという全く無駄な時間をかけているからである。基本的には保管場所を決めていたり、まとめて箱に入れて内容物を記入したりして対応しているつもりだが、ふと気を緩めたときに物が無くなってしまうのである。

先日、配管作業中に庭で塩ビパイプを切ったり継げたりしていた時のことである。長さ3m程のパイプを数十cmづつ切り、室内で接続作業をしていた。部屋の中は接着剤の匂いが充満し換気を頻繁に行わなければならないので、出来れば一気に作業を終えてしまいたいのであるが、そこは素人の悲しいところで一日では終わらないのである。その日も時間切れになり、外に出してある工具類を片付けて続きは翌日へ持ち越したのである。

翌日も晴れていたが、秋が深まりつつあり冬が近付いている気配である。さて作業でも再開するかと準備をしていたのだが、塩ビパイプが行方不明である。前日の作業で使った分を差し引いても2m以上残っていたはずである。そんな長尺物が無くなるはずも無く、また人の出入りがある場所でも無いので、パイプは私の手を離れたときにあった場所に留まっているはずである。

でも見当たらない…。

再び捜索を開始する。直径5cm,長さ2m以上、こんなものが隠れる場所は限られている。

でも、見当たらない…。

決して高価なものでは無いので再度購入しようかとも考えたが、買った後にパイプが発見されてもそれはもはや使い道が無いので、そういう無駄は避けたい。さらに探し続けた。

 でも、見当たらない…。

いったいどうなっているんだろう?時間ばかりが過ぎて行く。 訳がわからない…。仕方が無いので、パイプ探しは後回しにして他の作業に移ったのであった。


それから10日後、ついにあのパイプが姿を現したのである。それは…、

中央に不審な円形の物体?
斜めから見てみると…
あっ!こ、こ、こんなところに…。

と同時に、当時の記憶が鮮明に蘇って来たのである。それは作業中に長いパイプが邪魔になり、横にあった洗濯物干し台がふと目に止まり、そこへ何の気無しに乗っけたのであった。その長さといい、その収まり具合といい、ジャストフィットだなと満足さえしていたのである。そして、そのまま記憶から消え去ると同時に、視界からも忽然と消え去ってしまったのである。

物干し竿と見事に同化している
この10日間、庭中探したし、洗濯もした。そして何度もこの物干し台を見ているはずなのに、このパイプの存在に気がつかなかったのである。

う~む、パイプと再会の喜びも無い、ここから得られる教訓も無い、今後の役に立つことも決して無い、再発見と同時に体中から力が抜けてしまっただけであった。

2016年12月10日

家作り再開(1)

この夏から秋にかけて面倒臭い事が多発してしまい辟易していたのであるが、やっと一段落したと思った頃には既に秋も深まっていた。もう幾度となく経験した北海道の短過ぎる秋の訪れは、いつもと同じように冬の香りがプンプンしていたのである。

長い間放置していた家作りであるが、このまま行けば完成以前に修復工事が必要になりそうになってしまっているので、ここらで一念発起して重い重い重い重い重い腰をあげて工事を再開したのである。

その結果、びっくりするような速度で工事が進展し、上水道、排水、配管、床下、床上、それぞれの工事を単独で行ったにもかかわらず、なんと冬が来る前に終了したのであった。これまでの3年間、あーでもない、こーでもない、うーむ、と無駄に時間を過ごして来たのが全くもって嘘のようである。

パズルのような排水管工事
図面と床に直接書いた寸法、そして現物合わせ
図面と照らし合わせながら水平を何度も何度も確認する
勾配が必要なのに、余裕は2mmしか残ってなかった…

部屋の片隅に放置されていた給湯ボイラーが本来の位置に設置され、キッチンのお湯、お風呂、トイレの洗浄便座、洗濯機設置、そして洗面所までが一気に完成したのであった。内装の細かな部分は後回しになってしまっているが、普通の家にある普通の機能が普通に使用可能な状態になったのであった。


ボイラーも無事設置完了
洗面所は水もお湯もたっぷり
お風呂も使えるよん

結局、工事日数は素人の単独作業にもかかわらず、のべ6日間であった。

とにかく、冬が来る前に終わってほっと一息であった。

2016年11月30日

瓦斯自動販売機

自動販売機、それは人手を介することなく利用者が目的の物を入手出来る仕組みのことである。その多くは人の出入りする場所に置かれており、利用者の需要に合わせたサービスが提供されるものである。

切符や缶コーヒーなどの当たり前の商品が提供されることもあれば、需給バランスが保たれてさえいれば、何でそんなものが?というものまで売られていることもある。それは「おでん」や「うどん」の販売機であったり「卵」の販売機であったりする。中国の北京の地下鉄のコンコースには生きた上海蟹の販売機まであったようだが、動物虐待の疑いがあって撤去されたらしい。日本にも生きたザリガニをカプセルに入れてUFOキャッチャーにいれるという後先を考えない行動に出たものもあったようだが、今となってはどうなったか…。

先日、某地方自治体からのお誘いで、とある資料館へ行く機会があった。そこは年に1日しか開館しないという民族資料館であり、地元でもほとんど誰もその存在を知らないというレアな場所であった。

そこは北海道の生活資料館らしく、開拓当時の貴重な資料も多く大変興味深いものが多かった。そんな中でひときわ珍しいものがあったのである。

それは、ガスの自動販売機であった。

ガスの自動販売機

「ガス」は「瓦斯」という漢字表記
10円で8分間らしい

このレバーを

時計回りのクルッと回せばガスが出てくらしい
その説明は確かにその通りであろうと思われるし、実際にその通りに動作したのである。(ちなみにこの資料館は、展示物に手を触れて実際の動きを観察する事を推奨している)

しかし、 10円で8分間ガスが出るということは分かったが、そのガスをどのように利用するのかが分からなかったのである。この機械から出ているホースは低圧用のものなので、充填目的の高圧ホースのようにこれを使ってボンベにガスを入れることは不可能である。

10円を入れて出てきたガスをどうやって使うのか?何故8分間なのか?そもそも、こいつはどこで活躍していたものなのか?疑問だらけであった。

 同行の人達に聞いてみたところ、おそらく昔の宿や湯治場などに置かれていたガス設備(コンロなど)を有料で利用できるようにしたものでは無いかということであった。後日ネットで調べてみると、確かにそのような場所で使用されていたようである。ちょうど、昭和の時代に旅館のテレビや展望台の望遠鏡が100円を入れないと利用出来ないのと同じようなものらしかった。確かにお金を入れて指定の時間が経過すればその動作を停止するというのも同じである。

その利用形態といい、「瓦斯」という表記からも、これはおそらくこの機械は昭和の前半に使用されていたのだなと勝手に納得していたが、ふと側面を見てみると、そこには製造年月日が書かれており、それは「 平成6年9月」であった。え?そんな最近まで需要があるものだったんだ…。

大阪に本社のある会社らしい
他所で見つけた「使用方法説明」

その他にも分かるようで分からないものも展示されていた。

学校給食用のミルクピッチャー
ピッチャーではなく「やかん」らしい
これも昭和の前半のものかと思っていたら、同行者の40代の人々が「ああ、なつかしい。学校の給食でお世話になったね!」と言っていたので、それほど古いものでは無いらしい。私は給食の牛乳と言えば、瓶入りか紙パックしか知らない。北海道特有の器具なんだろうか?